死柄木弔


「いいなぁトガちゃんは。気軽に死柄木のこと弔くん、なんて呼べてさ。俺も下の名前で呼びたいよー」
「じゃあレオくんも呼んじゃえばいいじゃないですか! 弔くんきっと喜びますよ!」
「……喜ぶことは絶対ないな」

不本意だが否定するしかない。死柄木へのこの気持ちは一方的にすぎないのに、下の名前なんて。口にした瞬間にあいつの顔が歪むのが目に見えて分かるし、俺はそんな挑戦者でもない。
まず出来るならわざわざ二人きりの時に言わないよ。

「えー! 絶対喜びますよ!」
「トガちゃんは分かってないよー。死柄木に、弔(ハート)、なんて言ってみ? どんな顔するか___」

ドンガラガッシャン!!!ガン!ゴン!!

会話の真っ最中に聞こえた騒音の元を二人で見ると、そこには床に転がっている死柄木、椅子、机。椅子は少し削れてるけど…もしかして崩壊の誤作動か? 死柄木、意外とその面に関しては気を使っていたはずなんだが…。

トガちゃんが呑気に大丈夫ですかー、と死柄木に聞いたがお構い無し。奴はそれを無視して立ち上がり、俺に近づいてきた。
げげげ、さっきの聞かれてましたか。何も言葉を発しないところからして、お怒りですねー。でも死柄木が音もなく帰ってくるのも悪くない? 帰ったら「ただいま」でしょうが!

死柄木は俺の目の前で立ち止まった。
だが、特に何をされることも無かったので、俺が先に声を掛けた。すると戦慄く死柄木。う、やっぱり怒ってる? 好きな奴に嫌われたくないんだけど…。

少し怖くなってもう一度声を掛けると、死柄木は深呼吸して口を開いた。


「別に……で…い」
「…は?」
「弔でいい!!」

そう言った死柄木の顔は真っ赤で。え。おま。期待して、いいの?



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実は両片思いだった

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