06



「キーリカ島にも寺院があるの。そこで祈り子に祈りを捧げるための試練へ赴くことになるわ」

青く穏やかな海を進む最中、ルールーさんから召喚士の役目やガードの役割について話を聞く。
祈り子を有する寺院には必ず“試練”があるらしい。
召喚士が祈り子様へ会うに相応しい実力を持っているかというのを見極めるための、“試練”。
ガードは旅の道中、召喚士を守るために存在する。
召喚士をあらゆる災難から“守る”ので、“ガード”。
なるほどそういう意味か、と頷く。

この船の船員や他の乗客が、船頭付近にいたユウナちゃんを囲っている。召喚士という人物への大きな期待と信頼が手に取る様にわかった。

「ユウナは、ブラスカ様の娘なの」
「ブラスカ様……。確か聖像になっていた人、ですよね?ユウナちゃんは大召喚士の娘……ですか」

そりゃあ期待も寄せるはずだわ。
過度な期待ってヤツをさ。
ユウナちゃんを“大召喚士の娘”としか見てない人だってこの先いくらでも出てきそうだ。
特にエボンの関係者、とかね。

笑顔で話を聞いているユウナちゃん。
少し離れた所にキマリさんが立っていて、ティーダは船員の双眼鏡で海を眺めたり、船の中を見渡したり。ワッカさんとルールーさんはそれら全てが視界に入る位置からユウナちゃんを見守っている。

ティーダの双眼鏡が私を捉えた。
ニッと笑みを浮かべて弓を射る動作をする。と、
慌てて双眼鏡を外し、大きく腕でバツを作った。
私の命中率の高さを知るが故にビビったな?
ノリが若者のそれだな。なんてもう一度笑う。

そうだ。と思い立ち、ルールーさんに船内へ行ってくると声をかけて甲板から離れた。
船内……、操舵室なら世界地図があるはず。
現在地を確認しておきたい。
船長さんが居る操舵室。その壁に地図があった。
近くの船員に声をかけ現在地を指さしてもらう。

ビサイド島、向かうキーリカ島。
大きな大陸の南端がルカ。
ということは、西に小さな島が連なるあたり……もしくは地図に載ってない可能性も考えてビサイド島よりさらに南……に、海の遺跡もあるはず。
ビサイド島に流れ着いたなら、確実にこの辺り。
目星をつけてから腕を組む。

海の遺跡付近に現れたシン。
移動手段は海。
天災級、とは言っても本当に天災ではない。
視界に捉えられるし攻撃も当たる。分類上は、巨大モンスター。……まあ、規格外すぎるけど。
位置的に、そろそろエンカウントしそうだ。

「船長さん、初めまして。私はナナシと申します。召喚士ユウナのガードを務めている者です。確認したいことがあるのですが、お話を伺ってもよろしいでしょうか?」
「おおっ!召喚士様のガードでしたか!もちろん、私でよければなんなりとお申し付けください!」

感謝を伝え、まずはシンが現れた時の回避方法。
そして攻撃手段の有無。
大砲はなく、船頭の両側にワイヤーフックが一基ずつ設置してある。船の動力はチョコボ。船長さん曰く、この世界では当たり前の動力源らしい。
チョコボで動く船。チョコボの脚力が動力。
……これはその手の団体が黙ってなさそうだ。
っと、それはひとまず置いといて。

シンが現れたら撃退するより、いかに回避出来るか……というのに重きを置いていると見た。
それならワイヤーフックも有効ってわけか。
海に引きずり込まれないようにしないとだわ。

「船長さん。もし、シンが現れたら─……」

意味の無い対策かもしれない。
それでも。油断だけはしたくない。
私の言葉に、船長さんは深く頷いてくれた。
柔軟に対応してくれる人でよかった。
胸を撫で下ろしたのは言うまでもなく。

船長さんへ頭を下げてから操舵室を離れる。

波は穏やか……だが、鳴き声が遠くから聞こえた。
海鳥の鳴き声。
警戒の色を滲ませた、独特な鳴き声。
嫌な予感は割りと当たってしまうものだ。

船頭ではユウナちゃんとティーダが話をしている。
若者の青春に水を差したくないけど。
構えて、備えてもらわねば。

「ルールーさん、ワッカさん。シンが来ます」
「「え?」」
「船の右側面あたり、海鳴りもします!大きな波に備えてください!私たちガード以外は船内へ、」

話終える前に、海が揺れた。
空気を震わせて大きな風と高い波が船を襲う。
船員の一人が……叫ぶ。

「シーーーーーーン!!!」

近くにいた乗客の腕を掴み、船内へ誘導する。
ビサイドオーラカのメンバーもみんな中へ。

船の向き、シンの進行方向、どちらもキーリカ島へ向いていた。……これは非常に良くない。
このまま行けば島は半壊……全壊もありうる。
揺れと床の海水に気をつけながら、ルールーさんの側へ辿り着く。ユウナちゃんとティーダも無事だ。

「ルールーさん、今ここでシンを倒すことも退けることも不可能ですよね」
「そうね、私たちが死ぬ確率の方が高いわ」
「冷静で助かります!……でもこのまま見逃すと、キーリカ島へシンが突っ込むでしょう?被害がどれほど出るか……想像しただけで震えます」
「……なら、どうするつもり?」
「進路を変えさせましょう!!」

あなた正気?という表情で見られた。
正気も正気!至って正常です!!

揺れが収まり波も引いた。
船に破損箇所はない。
ワッカさんも近づいてきたのでルールーさんに伝えた内容を同じように話せば、笑われた。
その作戦、オレも乗った!と。

現在シンの位置は変わらず右側面。
頭……いや、背びれ?だけが海面に出ている。
ずっと右側にいるとは思えない。
相手は機械じゃない。意思のある生物だ。
ならば。

「おい!ワイヤーフックをシンに当ててくれ!」

ワッカさんの声に船員たちが戸惑いながら位置についてくれた。船頭からこちらへ避難してきたユウナちゃん。旅のリーダーである彼女に断りを入れず勝手に決めてしまって申し訳ないが、今から悠長に相談している暇はない。

「ユウナちゃん!まだここでは、シンを倒せない!だけどキーリカ島へは行かせたくない!!進路変更させるために、戦闘に入るよ!」
「はい!!」
「自分で提案しといてアレだけど、いいの!?」
「選択の余地はありません!」
「ふ、あはは!力強い決断だね!ユウナちゃんとは仲良くなれそうだ!召喚獣の準備をお願い!」

ワッカさんが号令を上げて、まずは右側のワイヤーフックが放たれた。海面に出ている箇所へ突き刺さりシンの巨体が揺れ動く。
……なんだ、痛覚あるじゃないの。

次の動作を警戒していたら何かが飛んできた。
羽の付いた小型のモンスター。
名称は“コケラくず”。
コケラとはなんぞや。オケラではなく、コケラ?
あのコバンザメみたいなのと同一個体だろうか。
直接戦わなくてもサブウェポンがある……と。
無限ではなさそうだけど、使役する数は多そう。

ティーダ、ワッカさん、ルールーさんが前線へ。
私とユウナちゃん、キマリさんが後方。
ユウナちゃんはいつでも召喚獣を喚べるように。
キマリさんはそのユウナちゃんを守るように槍を構える。私は全員へのバフをかけて矢を手にした。

─さぁ、正々堂々と。
セカンドバトルといこうじゃないか。

シン。


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