09



翌日。天候は晴れ。
一眠り出来たからか、体調も気分もすこぶる良い。
やはり睡眠をとるって大事。

今日はキーリカ島にある寺院へ向かう。
そこで試練を受けて召喚獣を得るとのこと。

ならばまずは腹ごしらえだ!
調理師の装備に切り替えてフライパンを手に取る。
ティーダを除く三名が、何を始めるのかと見つめていた。そんなに熱い視線を送られたら照れちゃう!
別にお前は見てない、何をするのかを見てる。
冷静なツッコミを入れてきたワッカさんを一瞥。
……まともな突っ込み出来るんですね。

「今失礼なこと考えただろ!」
「そんなことないでーす!」
「茶番はいいから早く料理を見せて」
「ういっす」

何を作ろうかな。
朝だからしっかり食べたいけど。
定番のパンケーキもといホットケーキにしよう。
材料を鞄から取り出し、慣れた手つきで調理する。
女性陣にはホイップクリームを乗せた。
男性陣にはベーコン!は、無いのでポテト。
お肉食べたいな、お肉。
店を見つけたら食材の有無を尋ねなければ。

ティーダとワッカさんがどこからか木箱を持ってきてくれた。そこへお皿とフォークを置けば完成。

全員綺麗に食べてくれた。
見た目に反して美味しい、とか。ふわふわしてる!とか。しょっぱい物も食べたくなる、だとか。
感想は三者三様だが概ね好評でひと安心です!
外にいるキマリさんへ声をかけたが首を振られた。
うーん、警戒心が強い。壁も分厚そう。
生ハムの原木より分厚く感じる。例えが微妙だな。
ガード仲間としてもう少し信頼を上げなければ。
……好物は何かな、ユウナちゃんに聞いてみよう。
お腹を満たし、島民の方々へ挨拶も済ませた。

道中にあるキーリカの森。
ここを抜けなければ寺院へ辿り着かないらしい。
森……森かぁ。森といえば。

目の前に飛び出してきたモンスター。
球根から触手のような蔦が生えた魔物。
オチューだ。毒を吐くからあまり好きではない。
無駄なMP消費もさせたくない。
ゆえに瞬殺させていただくぞう!
矢を引き絞った時、私の前にキマリさんが突然立ち塞がった。あっぶ、キマリさん危ないんですが!?

「……下がっていろ」
「えっ!話せるんですね!?」
「ナナシはキマリをなんだと思ってたんだ」
「人語を理解しても話せないのかなぁ?と……」
「ロンゾ族は知能が高いのよ。人と同じ……いえ、人以上に高いかもしれないわね。それにロンゾ族は魔物の技を自分のものに出来る場合があるの」
「「なにそれすごい!!」」

ティーダとハモってしまった。
オチューの攻撃である“タネ大砲”という技をキマリさんは“竜剣”というアビリティを使って習得した。
そして“タネ大砲”を使い、オチューを倒す。
いやいやいや、なに今の!すごい!!

私とティーダはキラキラした目でキマリさんを見つめた。敵の技を自分のものにしちゃうとか……!
かっこいい!ロンゾ族すごい!つよい!!
語彙力の低下が著しい!
私たちの視線を見事にスルーしてユウナちゃんの後方へ戻って行くキマリさん。ソークール。

その後、モンスターが現れると前衛後衛を交代しながら倒していった。ティーダへ戦闘の仕方やスキルの使い所を教えたりユウナちゃんが召喚獣との連携を確認したり。雑魚戦は良い訓練になる。
森の中ほどまで来ると、ルッツさんとガッタさんの姿を見つけた。二人も船に乗ってたのか。気づかなかった。……気づけなかった、が正しいかな。
ルールーさんへ近寄り、詳しく聞いてみる。
彼らはビサイド島の討伐隊であり、討伐隊はシンを倒すという目的のために結成されたもの。

シンは召喚士にしか倒せない。
それなのに、討伐隊が存在する。なんのために?
モンスターから村や街を守るというのはわかる。
だがシンという脅威を前に、彼らでは危険すぎる。

「……結成させてる組織は、エボンですか」
「そう、あなたが毛嫌いしているエボンよ」

どんどんきな臭く、怪しくなる組織だな。
最初から不信感しか抱いていないよ、私は!
この件はひとまず置いといて。
ルッツさんとガッタさんたち討伐隊は、開けた場所に現れた大きなオチューに手をこまねいていた。
なるほど、召喚士一行の出番だね!

シンに比べればどうってことはない。
快勝してみせればガッタさんが感動の声を挙げる。
あれだ、まずは装備を整えてほしいな。
機動性重視なんだろうけど、さすがに胸当てくらいは着けてほしい。軽装備すぎて心配になるわ。

森を抜けると、長い長い階段が目の前に。
なかなかしんどそう。
移動速度を上げるプロトンというスキルを発動。
これで少しは楽に進めるはず。
ある程度登った所でワッカさんが笑い出した。

「ふふふ……ここはな、由緒正しき石段なのだ。何を隠そう、オハランド様が現役時代にここでトレーニングしたのだ!」

ワッカさんは某ハムスターの生まれ変わりか何か?
そのうちヘケッ!とか言わないよね。言いそう。
プチ情報を聞いているとビサイドオーラカのメンバーが次々に集まってきた。彼らは出航までにここでトレーニングするつもりらしい。熱心ですねぇ!
ティーダにワッカさん、ビサイドオーラカの一同、そしてユウナちゃんまでもが駆け上っていく。
若さ溢れてるなぁ……。私とルールーさん、キマリさんは彼らの後をのんびりと追った。

階段を上りきる寸前、オーラカ一同が駆け下りてくる。何事かと思えば頭上からワッカさんの声が。

「早く!シンのコケラがいる!!」

また出た、コケラ!!
なんなんですかシンの“コケラ”って!?
またも尋ねる暇は無さそうだ。
二本の触手が地面から生え、丸い銀色の塊が寺院へ続く階段の前に鎮座している。あれがコケラ?
弓を構えてモンスターに対峙すれば名前が浮かぶ。
シンのコケラ・“グノウ”。
名前付きのモンスター。中ボスってところだろう。
まずは触手を叩き潰してから銀色へ移行だな。

何故ここにシンが使役するモンスターが現れたのかはわからない。自身が島へ上がれないから中型を放ったのかもしれない。そこはなんとも言えないが。
なんにせよ、ここは陸。海じゃない。
私たちが有利な地面がある場所。
触手があろうが体格差があろうが関係ない。
真正面から見据え、弓を引き、矢を穿てる。

海での雪辱、こいつで晴らさせてもらおう。

「行きます!」

ユウナちゃんの合図で、戦闘を開始した。


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