02



ブリッツボールスタジアムを中心に形成されたであろう、海風爽やかな本土最南端の街─ルカ。

海の街と聞いてすぐに頭を過ぎったのは大海に面し勇猛なる黒渦団を有する、エオルゼア随一の海都。
リムサ・ロミンサ。
あの海の都にも負けず劣らず活気に溢れている。
大会中は休業するとのことだが、屋台やお店も多く商店街もあり、どうやら住宅街だってあるらしい。相当大きく広い街だ。そう、広い。

何故冒頭から街のことを話しているのかというと。
何を隠そう、絶賛迷子だからです!!
前話の最後スタジアムにいただろ?って?
飲み物でも買いに行ってきますと席を立ち、屋台を見つけたものの案内板が視界に入りそちらへ足が向かってしまった。そして案内板を見てこれまたテンションが爆上がり、街の中を行ったり来たり。

そうしているうちに、ここはどこ。

自ら迷子になってしまった次第である。
いや、次第である。じゃないよ。何してんの私。
好奇心旺盛なのも大概にして冒険者!つまり私!!

だがまあ迷子になったものは仕方がない。
試合が始まるまでにスタジアムへ戻ればなんとかなる。入り口にさえ辿り着けば問題ない!
……辿り着ければ、ね……!
遠い目をしてしまったのは秘密だ。
今頃ルールーさんにボロクソ言われてそう。
「飲み物買いに行くだけで迷子にならないで!」と怒られる未来が見える。ファイラは避けたい。
ティーダとワッカさんは笑ってて、ユウナちゃんは心配してくれてると思う。キマリさんは……いなくなったらいなくなったで構わんが?って感じか。
ちくしょう、もうちょっと興味を持たれたい!

とりあえず海が見える場所まで歩こうかな。
きっとこっちだ。次の角を右に曲がりまーす!
適当に歩いて街並みを堪能する。
レンガ造りであったりタイル造りだったり。
海の街の建物は塩害に悩まされる運命だよね。
さすがに松の木は見当たらない。日本要素は無し。
階段を上って街を見渡せる高台へ着いた。

「あれ?冒険者さん、なんでここに?」

声をかけてきたのは討伐隊のガッタさん。
素直に迷子です。と言えば笑ったのはルッツさん。
二人は観戦しないのか問うと討伐隊の連絡待ち。
そうだった、二人とも任務で来てるんだったな。
ルッツさんがスタジアムへの方向と道を教えてくれたのでお礼を言い来た道を戻……ろうとしたら再びガッタさんが声をかけてきた。

「冒険者さんは戦うのが怖くないんですか?」
「怖いですよ。自分よりも大きく……それこそシンのようなモンスターと対峙した時は特に」
「それなら、どうして……戦うんです」
「大切な人たちを守りたいって気持ちが大半です。あとは……そうですね。死にたくないから、かな」
「死ぬかもしれないのに……?」
「死なないために戦うんですよ!」

ニッと笑みを見せれば難しい表情を浮かべる。
うーん、かなりシンプルな理由だと思うんだけど。
対してルッツさんは頷いていた。

「……そうだよな、死ぬために戦うわけないよな」

ルッツさんの顔色はあまり良くない。
今までに辛い出来事を体験している。
モンスター討伐はもちろんだけど、本命はシンだ。
人の死に目に合うことが多いんだと……思う。

「お二人も死なないために戦ってくださいね」
「……ああ、善処する」
「先輩!絶対倒す!!くらい言いましょうよ!」

ガッタさんが拳を握ってルッツさんに声を挙げる。
なんとも頼もしい後輩ですね。
微笑ましげに見つめていたが、スタジアムの方から音楽が聴こえてきた。おっと。試合始まっちゃう?

二人へ頭を下げてこの場を後にする。

「冒険者さーん!オレたちの分までビサイドオーラカの応援よろしく頼みましたよー!」
「はい!ガッタさん、私の名はナナシです!」
「!失礼しました、ナナシさん!」
「おうさ!任されました!」

手を振れば振り返してくれるガッタさんが眩しい。
若さが眩しい。
階段を全て降りきって左へ曲がる直前。

「そうだった、ナナシー!」
「はーい?なんですかルッツさーん」
「お前と青年の啖呵、最高だったぞ!」
「ありがとうございます!今年は優勝ですよー!」

ゴワーズへ向け切った啖呵は、どこからか撮られていたようで映像スフィアに映っていたらしい。
ビサイド出身の人たちを鼓舞出来てたら嬉しいな。

高台にいる二人を見上げてもう一度大きく手を振り今度こそ、この場を後にした。



***



「おい」

スタジアムの入り口を発見し嬉々として観客席へ戻ろうとした時、見知らぬ人が私を呼び止めた。
赤い和風な服が目を引くガタイの良い男性。
なんとも強面で怖そうなお兄……おじ……さん?

呼び止めた内容を聞こうと体をそちらへ向、っ!

─ガァン!!!

……体を向けた瞬間に大剣が床を砕いた。
あっぶな!そしてこっわ!
なになに!?奇襲……なら、声はかけないか!
でも明らかに敵意を纏う一撃だった。
突然の攻撃に飛び退いたが……っやばい、二撃目!
床を砕いた刃を取って返し、私の顔面目がけて振り上げてきた。もちろんそれも避けたけど。
なんだ、この殺意の高さは!?

これはもう黙ってられない。
懐に入られないよう適正距離をとる。
弓を取り出し矢を構えた。

「……弓矢使い、か」
「弓術士です!」
「ガードには向かんな」

本当になんだこの人。こうも喧嘩腰なのは何故!
カチンとする物言いに声を荒らげたくなる。
見ず知らずのあなたからガードに対する向き不向きを言われる筋合いはないんですよねぇ!
腰元にぶら下がる酒瓶を発見。

「お酒、好きなんですね」
「……」
「好物は大事に仕舞っておくべきです、よ!!」

矢を上へ向け、数本射る。
そちらに意識が逸れたら酒瓶……と思うでしょう!
酒瓶への警戒も予想済みです!
上空から降り注ぐ矢を避けつつ体を捻る大剣の人。
強く強く矢を引き絞る。私が狙ったのは。

酒瓶を吊るしていた、紐。

細いそれを撃ち抜いて酒瓶が落下する。
盛大に割れる音が響いた。追加で酒瓶に一矢放つ。

「……貴様、」
「いきなり喧嘩を売るのはどうかと思いますが」

回避するような性分でもないので。
売られた喧嘩はそれなりに買いますので!!

この騒ぎを聞きつけた衛兵らしき人たちがこちらへやって来る。おっとまずい。これ以上ルールーさんに怒られる要素を増やすわけにいかない。

「剣は人に向けるものじゃないですよ、おじさん!あと弓術士を舐めたらダメですからね!」

さらに大きく後方へ下がった。

「おい、小娘」
「こむすめ!?」
「4番ポートだ」
「はい?」
「さっさと行け」

めっちゃ睨むじゃないですか。
怖い。ご自分の顔面の圧力を理解してらっしゃる!

「……おじさん!4番ポートってどっちですか!」
「なんなんだ、お前は」

いやそれ私のセリフー!!
ツッコむより先に大剣の刃で行くべき道を指した。
何がなんだか分からないけど拒否権はないようだ。

走り出して数分。
視界に飛び込んできたのは謎の機械に囲まれたティーダたち。機械人形オートマタかな?ロボットではなさそう。
走りながら矢を構える。
範囲攻撃でこちら側の機械人形を蹴散らした。

「大丈夫ですか!」
「ナナシ!?」
「あなたどこほっつき歩いてたの!」
「ごめんなさいルールーさん!迷子してました!」
「迷子!?あなたねぇ!……お説教は後でじっくりするわ!まずはこいつらを片付けるわよ!」

ひぃぃ、機械人形にサンダラが落ちた。
私に向けられる雷な気がして背筋に冷や汗が流れる。あの黒焦げの塊……数分後の私の姿だな……!

湧いて出てくる機械人形を全て壊して進む。
走りながら説明を受けた。
開会式が始まる前、私が帰ってこないのでルールーさんとユウナちゃんは街を見回り、途中でアーロンさん?という方を見たという情報を得てそれを持って選手控え室へ向かった。
探してみようとワッカさんを除くメンバーで探しに出た。情報が集まる酒場へ足を運び、キマリさんとティーダがロンゾ族に絡まれているのを狙いユウナちゃんが拐われてしまった。
しかもそれはビサイドオーラカの対戦相手である、アルベド・サイクスが仕組んだことらしい。

「ユウナちゃんは無事なんです!?」
「まだ分かんないとこ!」
「そっか……!……私も探してくださいよ!」
「あなたは放っといても戻ってくるでしょ!?」
「!!これが……信頼関係……!?」
「はいはいそういうことにしといてあげる!」

なんてぞんざいな扱い!
いや待てよ、ティーダはここにいていいの!?

「ワッカが踏ん張ってるから大丈夫!」
「踏ん張りは長く続かないけどね!」
「……ダメじゃないですかァー!!」

わぁわぁ言いながら走る。
するとちょうど一隻の船が出航しようとしていた。
まさかこれに乗ってるのか。
飛び乗る直前でプロトンを発動してサポート。
四人とも危なげなく乗り移れた。

開けた甲板、床にはいかにも怪しげな扉。
軋む音と共に扉が動けば、そこから昇降機に乗った大きな機械が姿を見せる。
稼動し始めたら……戦闘開始だ。

「叩き壊してみせますよォ!」
「ナナシのテンションどうした!?」

赤い服のおじさん、このことを予見してたのかな!
おじさんが少しは足止めしといてほしかった。
脳裏に浮かんだ赤い服のおじさんを隅へ追いやり、
竪琴をひとつ、爪弾いた。


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