次に目を開けた時、私は宙に浮いていた。
ありえない状況に驚き、バランスを取ろうと両手を広げるが転んだりグラついたりはしなかった。
不思議なエーテル空間。
そして大きな大きなクリスタル。
【
本当にこの空間へ来てしまうとは。
『呼びかけに応じてくれてありがとう。人の子よ』
柔らかい女性の声。
脳内に直接……語りかけてきた!?というアレだ。
そんな経験あるわけないけど、アレなんだ。
いやむしろ話しかけてもらえて良かった。
私から声をかけるべきなのか迷っていたので。
『あなたを呼び寄せたのは、あなたを必要とする
“祈り子”の願いに私が応えたからなのです』
「祈り子……?」
なんだろう?
聞いたことがないワードだ。
こちらへ。そう誰かに呼びかけると青紫色のノースリーブの服を纏い、フードを深く被った少年……?が、現れた。顔や表情はフードでよく見えない。
エーテル空間を歩いて私の側へやって来る。
手を伸ばせば触れられるほど近くまで来た時、
ようやく、少年が言葉を発した。
『夢を見ることに疲れたんだ。眠りにつきたい』
疑問符の羅列案件である。
夢を見るってことは寝てるんじゃないのかな?
でも眠りにつきたい?どういうことだろう。
眠たいなら寝てしまえばいいのに。
『僕が眠ってしまったら、“彼”が消えてしまう』
「……“彼”?」
『どうか、救って欲しい。出来るだけ多くを』
「多くの人が何かの犠牲になる・ってこと?」
『僕は直接干渉出来ない。“彼”さえも救えない。
だからあなたに、助けを求めたいんだ』
やっぱりよく分からない。
というか、言葉のキャッチボールが出来ていない。
意思疎通するならドッジボールはよくないぞ!
そちらから頼むなら尚さらでしょうよ!
ツッコミどころ満載ではあるけど。
少年は私に助けを求めてる。
この子を、この子が指す“彼”を──救う。
私が現代からエオルゼアへ、更にこの子の世界へ。
その世界を救うことが導かれた意味……なのかな。
救う、だって。
エルムじゃあるまいし。私は勇者や英雄、主人公になる器じゃない。サポートどころか町の名前を伝えるだけのモブもモブ。名もなきNPCがいい所だ。
世界を救う?無理無理の無理。
……でも、きっと。
お節介で世話焼きでお人好しなあの冒険者なら、
手を差し伸べるんだと思う。
自分の利益、不利益関係なく。
無理だとしても。無謀だとしても。きっと。
その人の力になりたい、と立ち上がるんだと思う。
私はそんな冒険者の背中を見てきた。
それなら、私が言える言葉はひとつ。
「私に出来ることがあるなら、力になります」
そのために、力をつけた。鍛えてもらった。
この子の願いために私はエオルゼアを旅した。
立ち上がってみようじゃないか。冒険者のように。
『ありがとう』
「どういたしまして!」
笑って返せば、少年の口元も緩く弧を描いた。
まず具体的に何をするべきか。
現地へ着いたら聞き込みから始めよう。
ここで少年やマザークリスタルに尋ねてもおそらく
欲しい回答は得られないだろうし。
「よし!それじゃあマザークリスタル、“祈り子”である彼の世界へ連れて行ってください」
『─ありがとうございます』
「いいってことよ!ですよ!」
『あなたに……クリスタルの導きがあらんことを』
マザークリスタルの声が脳内に響いたと同時に目を瞑る。体が浮き上がる感覚はテレポに似ていた。
新しい旅の始まりだ。