何事もなく、戦闘終了。
勝利のファンファーレが鳴り響くってやつだ。
後方にいた私は勝利に一人頷く。
ティーダが振り返り、ハイタッチを求めてきた。
おお。ノリが若いねぇ!私は見た目より精神年齢が高いからちょっとだけドギマギしちゃう!
手が重なり、パァン!と乾いた良い音がした。
直後。
突然壁が壊される。
こちら側ではなく、反対側からの破壊。
土煙の中から見慣れないゴーグルを付けた四人組が現れた。雰囲気的に……味方ではなさそうだ。
手には銃らしきものを持っているし、先頭の小柄な子以外はピリピリとしたオーラを纏っている。
「トヤネマ、ガエガ!?」
銃口を向けられ、私も反射的に矢を手にした。
そちらがやる気なら、やられるわけにいかない。
……で、その前に何て言ったの?今の現地語??
ツッコむ前に武器を構えてしまったので聞けない。ちくしょう、好戦的な人はこれだから!
「ナナシ、あの人なんて言ったんすか?」
「ティーダも分からないの?」
「まったく」
「私もだよ」
敵意はバシバシ飛んできてるね!
苦笑いすると「確かに友好的じゃあないな」なんて納得している。きみはきみでマイペースだねぇ。
小声でティーダと会話していると、あちらの三人がわぁわぁ騒ぎ出した。さて、どうしようか。
こちらの言葉が通じないのは些か困る。
武器を下ろしたくても、身の危険を感じて下ろせない。……いや、お互い友好的じゃないからこそ、こちらから武器を下ろすべきかな。
ひとつ息を吐いて弓を下ろしたら。
ガァン!!
銃弾が私とティーダの間を抜け壁へ突き刺さった。
下ろす動作が怪しいと判断されたわけだ。
そうじゃなければわざわざ私たち二人の間を狙ってこないだろう。相手に躊躇いはないらしい。
引き金を引いた人物を一瞥すると、二発目の準備をしているようだった。撃ち慣れているようだ。
大きさはハンドガン。他の二人が持つのはライフル銃に見える。機動性がいいもんな、ハンドガン。
なるほど、なるほど。
「あっぶね!大丈夫っすかナナシ!……ナナシ?」
下ろした弓を素早く構え直した。
相手が二発目を撃ってくるより先に矢を放つ。
放たれた第一矢は銃口に刺さり相手の手から離れ、第二矢は宙に弾かれた銃そのものを弾き飛ばす。
第三矢目で銃本体を貫く。
はい、まずはハンドガンさようなら。
「……ナナシの方が怖いんだけど」
なんだとティーダ!聞き捨てならないぞ!?
売られた喧嘩を買っただけだよ!
熨斗をつけて綺麗に返してやったけどねてへぺろ!
私の眼光の鋭さ、違うな、キレっぷりに驚いたのか
あちらの四人は未だに固まっている。
あんた達が引いてどうすんのさ。
「ねぇ、そっちにこちらの言葉を話せる人はいない?こっちはそちらの言葉が分からないんだ。出来れば戦うより言葉を交わして意思疎通したい」
すると小柄な子が前へ出てきた。
「私が話せるよ。通訳も出来るから……ええと、その弓、下ろしてもらえ、ますか?」
「ナナシ、めっちゃビビられてんじゃん!」
「うっさいなティーダ!もちろん下ろしたい。先に攻撃してきたあなた達が銃を下ろすなら、ね?」
攻撃された私から武器を下ろすなんて出来ないよ?
にっこり笑えば、その子は仲間に声をかけた。
するとかなり渋々な感じで銃口を下へ向ける。
よし、まあ及第点。
地面に置けよ、とまでは言えないもんね。
私も構えた弓を下ろす。
「そちらがいつでもこちらを撃てるのと同じように、私も矢は手にしておく。それを忘れないで」
ティーダ。おいティーダ!
「やっぱナナシの方がやべぇかも……」って
聞こえてるよ!頼むからきみは味方でいてくれ!
お互い武器を下ろした後、私もティーダもここがどこなのか何の建物なのか知らない旨を伝えた。
曰く、ここは寺院だったが廃墟と化してしまった。
アルベド族……と呼ばれる彼女たちは廃墟の中に使用出来るエネルギーがないか探索しているそうだ。
そして私たちがそのエネルギーを狙っているんじゃないか、ここを荒らそうとしているんじゃないか。
……そう思って武器を構えた。とのこと。
武器を構えちゃうのは好戦的過ぎると思うよ……。
「二人はどうやってここに来たの?」
「私は、気がついたらここにいた……かな」
「オレもほぼ同じく、っす」
「どういうこと??」
彼女の質問に二人して「よく分からない」と答えるしか出来ない。マザークリスタルも祈り子の少年ももう少し人気のある所に飛ばせなかったのか!
いくつか彼女の質問に答えて、彼女は仲間と話を始めた。今までの話を通訳してるんだろう。
「ティーダは確か、大きなモンスター?に食べられてここへ来たんだっけ?よく生きてたね」
「食べられたというか吸い込まれたというか。オレ、今日だけで訳わかんない状況が続いてさ。驚いたし目の前が真っ暗になったー!って思ったけど。
ほーんと、生きてりゃ良いことあるって実感中!」
「良いこと?」
「美味しいものご馳走してもらえただろ!」
「ははは、めっちゃポジティブ!ティーダならどこでも生きていけそう。メンタル的な意味で」
「いや、オレめちゃめちゃメンタル弱いっすよ」
ティーダと呑気に話し込んでいたら、あちらの話が纏まったようで彼女が再び近づいてきた。
話を要約すると。
彼女たちは機械を動かす為のエネルギーがほしい。
だが、人手不足でなかなか作業が進まない。
腕の立つ私たちを見込んで手伝ってもらいたい。
手伝うことの見返りは、衣食住の約束。そして手伝いが終わった暁には有人島まで連れて行く。
ここから出られる上に有人島まで行ける!
……まぁ、手伝いはしてもらうけどね。どう?
彼女の提案、というか申し出はありがたい。
どうするもこうするも、脱出が出来るなら。
私もティーダも一度顔を見合わせて頷いた。
「私はナナシです。よろしくお願いします」
「オレはティーダっす!よろしくお願いしまーす」
「私はリュックだよ。こちらこそよろしくね!」
じゃあ着いてきて!
大柄な三人を小走りで抜き去るリュック、さん。
ちゃん?……なんて呼べばいいんだろう。
アルベド族である四人の後を着いて行く。
この選択でよかったかな。
間違っていたとしても出会いは一期一会だ。
大切にしなければ。……弓撃っちゃったけど。
彼女らが壊した壁の向こう側に足を踏み入れる。
先には階段があり、ひたすら上へ登った。
地上に出ると一面水浸し……いや、海だった。
先程の建物が廃墟と呼ばれるわけだ。
小型のボートに乗り、沖まで漕ぎ出せば船が見えてくる。だいぶ大きな船。彼女らの母船らしい。
潮風に乗り、微かにどこからか歌声が聞こえる。
それは祈りのような。
何かを慰めるような。
導くための灯火のような。
─そんな歌が、聞こえた。