島の皆さんに手を振り、港へ向かう。
エースくんの仲間はほとんど先に船へ戻ったと
聞いた。ご挨拶出来なかったのが心残りだ。
エースくんとマルコさんの二人が港まで付き添ってくれる。その間、エースくんは手を握っていてくれた。抱き抱えると言われたが、丁重にお断りした。歩けるようになったし、赤面しちゃうし。
「ここまでで、大丈夫です」
「何言ってんだ。おれに掴まれよ!」
「エースが嫌ならおれが連れて行こうか」
「はぁ!?ダメだ!マルコでもダメだぞ!」
「くく、はいはい分かってるよい」
二人のじゃれ合い?を微笑ましげに見る。
お兄ちゃんと弟、って感じだなぁ。
エースくんは自分の船があるとして、マルコさんはどうやって船へ戻るんだろう?もしかして一緒に乗っ…あの体格で二人乗りは可能なのかな…?
エースくんがストライカーに乗ると、私へ手を差し出す。なんだろう、別れの握手?そこからだと手を伸ばしても届かないのですが!
「私はお二人を見送ってから行きますね。エースくん、握手なら一度上がってもらえると…」
「「いや、ちょっと待て!?」」
ハモってツッコまれた。
えっ、なに?
何故二人とも戸惑った表情をしているのか。
「あー、エース。お前の彼女はここで別れるつもりみたいだぞ。短い逢瀬だったなァ?」
「茶化すんじゃねーよマルコ!リオ、見送りはいらねェ!一緒にオヤジの船へ行こう!」
「え?」
「むしろどこへ行くつもりだったんだよい」
「え??」
私も、エースくんたちの船に乗るの?
きょとんとしていたら、もう一度エースくんが私の前へやって来た。そして手を握られる。
「リオ、おれと一緒に行こう!」
「ここで、お別れじゃないんですか?」
「なんでだよ!」
「遠慮ならいらねェよい。オヤジにも話はいってる。まぁ、事情は直接話してもらわねぇといけねェけどな。エースがいるんだ、大丈夫だろう」
「マルコもいるしな!」
「そうさな。悪ィ奴じゃねぇってのは確信した」
「リオが悪い奴なら大抵の奴は悪モンだろ」
「そりゃ言えてらァ」
ぎゅ、と握られた手が熱い。
いいのかな。一緒に船へ行っても。
自分の世界へいつ帰ってしまうか分からないのに。エースくんの傍に、いてもいいのかな。
「…リオ、おれが怖いか?」
「いいえ、怖くありません」
「マルコは怖いか?おれはまぁまぁ怖い」
「おい」
「ふふ、マルコさんも怖くないです」
「じゃあ。海賊が、怖くなったか?」
「そう…ですね。怖いです。でも、あの人たちとエースくんたちは違うと思ってます」
「尻込みしてる理由は、他にあるか?」
密かに息を詰める。
言ってもいいのか躊躇うけれど。
ここで話しておかないと一緒に居れないと思う。
「私はこの世界の人間ではありません。自分の世界へいつ戻るかわからない私が、お二人の大事な船に乗ってしまっていいのかと…。それに、迷惑をかけてしまうのは嫌だなぁ、って…」
顔を見合わせる二人。
マルコさんの腕が伸びてきて私の頭を撫でる。
ひと足先に戻ってるよい、そう言って青い炎を纏い…空を飛んで、船がある方へ行ってしまった。
空を…空を、飛んだ!?その前に姿が、青い鳥?になったのはどういうことだろう!?
突然の出来事に驚いてしまう。
マルコさんの行動はよく分からないが、目の前には変わらずエースくんが立っている。
「リオが違う世界から来た人間だとしても、誰も迷惑だなんて思わねェよ。大事な船だから、大事な人を乗せたいとおれは思う」
「エースくん…」
「ちゃんと、伝わってるか?」
手を握ったまま、ぐっと距離を縮めてくる。
彼の目は真剣だ。
「想いを伝えないで後悔するのは確かに嫌だな」
人懐っこい笑みを浮かべて言葉を紡ぐ。
「おれはリオが好きだ。おれと一緒にいてほしい。それこそリオが自分の世界へ戻る…その時まで。おれの一番近くにいてほしい」
ぽろっ。一粒、二粒。次から次にぽろぽろと。
泣きたくないのに涙が出る。
エースくんの言葉が心に響いて涙が溢れる。
どうして、エースくんの言葉はこんなにも温かいのだろう。嬉しく思えるのだろう。
“どうして”の理由を私はもう、分かっていた。
「私も、エースくんが好きです」
「…良い人・って意味じゃなく?」
「ふふ、あなたに恋しています」
「っ、やべぇ、嬉しい…。好きだぞ、リオ!」
エースくんとの距離がゼロになり、ぎゅうっと抱きしめられる。もう二度と離さないとでも言うかのように、それは強く強く。
私も応えようと恐る恐る背中に手を回した。
すりすりと首筋に擦り寄ってくるエースくんが
愛おしくてたまらない。
「…これ以上は船に戻りたくなくなるな、へへ。嬉しさが止まんねェ!さァ、みんな待ってる!」
おれと一緒に、船へ行こう!
少しだけ離れて手を差し出すエースくん。
今度は躊躇うことなく、その手を握った。
エースくんと一緒ならきっと大丈夫。