28

今日はマルコさんと書類やファイルなどが所狭しと並んでいる部屋へ来ていた。
ここがマルコさんの主な仕事場らしい。
私の役目は、日付がバラバラだったり、纏めきれずに散らばっている書類の整理。
なかなか量がありこれを一人で仕分けし、纏め、綴じる…というのは骨が折れる作業だと思う。

肝心の書類の内容についてだけど、こちらの知識が無さすぎて読めはするが何の事やらサッパリ!ということがマルコさんに知れたので、触っても構わない…そう判断された模様。
島の名前も人の名前も分かりませんからね!

「リオ、黒い紐で綴じた書類取ってくれるか」
「はい!こちらですね」
「ああ。次は青い付箋が付いた書類を…」
「日付ごとに纏めておきました!緑の付箋が付いた書類も混ざっていたので、そちらは別に分けましたが…よかったですか?」

マルコさんに手渡そうと顔を上げれば。
何故か目頭を抑えていた。
ど、どうしたんだろう。

「…リオ…うちに、」
「はい?」
「うちに来てくれ…一番隊で働いてほしい…」

マルコさんの苦労が窺える。
…モビーに乗っている間は、積極的に書類整理含め事務作業を手伝ってあげようと思う。
パソコンがあればもっと効率よく作業出来るんだけど。無いものを言っても仕方がないか。
カバンに入れていた電卓を取り出す。

「計算するものがあれば任せてください」
「リオが女神に見えてきた」
「ふふふ!どんどん褒めてください!わたくし、褒められて伸びるタイプですので!」
「出来る女のリオ、これを頼むよい」

ドサッ、と現れた書類の山。
えっ?これはどこから出てきたの!?

「ま、任せてください…」
「…いや、本当に申し訳ねェ…」

黙々と計算し、ペンを走らせ、マルコさんへ報告。分からないものはその都度確認して。
うーん、マルコさんこそ割りと本気で私の上司になってほしいな?とっても仕事しやすい。

「…リオに聞きてェことがあるんだが」
「はい、なんでしょう?」
「エースとお前さんが電伝虫で連絡を取り始めた頃、おれが預かったことがあるんだが」
「はい、覚えてます」
「その時おれからの着信には気づいていたか?」

エースから、当分の間連絡できねェ。と言われて二週間は本当に全く音沙汰が無かった。
…そういえば同期と飲んだ夜に、2回非通知着信があったような。声に出して驚いた記憶もある。

えっ!!
あの着信はマルコさんからだったの!?

「その時は友人と飲んでいたので、着信に気がつかなかったです…!こちらから折り返し連絡も出来ませんでしたし…、すみませんでした」
「いや、気にしないでくれ。あのエースと連絡を取り合ってる人間、っつーのが一体どんな奴なのか。少々…気になっちまってなァ」

想像していたより、真面目でしっかりしていて、
それでいてエースに優しい奴で…安心したよい。

真面目でしっかり…。私には過大評価な気がするけど、認めてくれているようで嬉しい。
電卓を打つ指に力を込めてしまいそうだ。
計算は落ち着いて、慌てず、正確に!

計算途中で後から出てきたものを加えてやり直し。訂正箇所を見つけては書き直し。作業途中で書類や言伝、相談事などを持ってくるクルーの方々の対応までして。捌き方が非常に上手い。
上手いけど…やはりマルコさんは多忙すぎる。

「…マルコさん、」
「おう?」
「寝れてます?」
「ああ、それなりに」
「寝てない人の答えですね…」

整理を終えた書類を紐で纏める。
それを日付ごとに机に並べて、立ち上がった。

「計算終わりました!」
「は!?もう終わったのか?」
「作業環境が最高でしたので!食堂で飲み物を貰ってきますね。書くこと以外で私が出来そうな仕事があれば、残しておいてください。手伝います!…あの、マルコさん!」
「よ、よい」
「疲れたら、疲れたって言ってくださいね!」

ビシー!と指をさして部屋を出た。
…そんなこと、本人が一番わかってるんだろうけど、言わずにはいられなかった。どんなに心と体が強い人であっても、抱え込みすぎるのは良くないんだ。見てるこっちが、つらくなる。
…同期の先輩が、そういう人だったから。

んん、でも差し出がましい言動だったかな。
若造が何言ってんだよい…とか思われたかな。
…それはそれで、いいか。

食堂へ入って厨房に声をかける。
珍しくサッチさんがいなかったけれど、今の時間の食堂を取り仕切っているクルーの方に事情を話して飲み物を作ってもらった。
柔軟に対応してもらえて、とてもありがたい。

「リオ、何持ってんだ?んでどこ行くんだ?」
「エース!お仕事終わったの?」
「おう!ばっちりな!」
「そっか、お疲れ様でした!私は今から、マルコさんの仕事部屋へ飲み物を持って行くところだよ。良かったら、エースも一緒に行く?」
「もちろん行くぞ!」

今日のおれたちの仕事はなぁ、とエースの話を聞きながらマルコさんの居る部屋へ。
扉をエースが開けてくれて先に入らせてもらう。

「よぉマルコ!頑張ってるかー!」
「エース。珍しく早いじゃねェか」
「まぁな!おれは頑張った!」
「はは、そうだな。偉いぞ。…しかしリオにはずっと船に居て貰わねぇとだなぁ…」
「どういう意味だ?」
「お前が真面目に働くっつー意味でだよ!」

朝も起こしてくれてるようだしな?
寝坊助の、エースくんよォ!

軽口を叩き合っている二人は楽しそうだ。
そんなマルコさんの机に、飲み物を置いた。
蜂蜜入りの、ホットミルクだ。

「…リオはおれをどうしたいんだよい」
「ストレスを軽減しようかな、と」
「寝かそうとしてねェか?」
「おや、バレちゃいました?」
「…気持ちだけ、受け取っとく」
「そう仰ると思いまして。コーヒーもどうぞ」

机にもう一つ、コーヒー入りのカップを置く。
せめて仮眠とってくれたらいいなぁと思ったんだけど。マルコさんは絶対寝ないな、とも分かっていたので、二つ用意させてもらったのだ。

「……エース」
「お?なんだ?」
「リオは一番隊で働いてもらう」
「は」
「え?」
「おれの余計な仕事の負担が減る。なによりリオの仕事は無駄がない。おれのサポートを頼もうと思う。文句は聞かねェ。これは決定事項だからな」
「はぁあ!!?」
「リオが出来る女で助かるよい…」
「えへへ、マルコさんに褒められてる!」

すごいでしょエース!
笑顔で振り向けば、エースもすごい顔をしていた。…どういう感情なの、それ?
怒ればいいのか、よかったなと喜べばいいのか。そういう感情…かな??喜んでほしいです!

マルコさんはホットミルクに口をつけていた。
ふー、と息を吐いて私を手招いて呼び寄せる。
見つけてほしい書類があるんだそう。
航海記録も纏めたい、と。
…なんだか仕事内容が変わってきたな。

「っ、マルコ!」
「なんだ」
「リオに手ェ出すなよ!!」
「おれは仕事中に手を出すほど節操無しじゃねェ」
「わかってるけど!心配なんだよ」

モゴモゴと、何か言いづらそうにしている。
どうしたのかとエースへ近づけば

「マルコは、かっこいいから」
「…はぁ?」
「リオが惚れねェとは、限らないだろ!」
「なんの心配してるの…エース…」
「阿呆な弟を持つ兄貴は大変だろ?」
「そうですね…」

なんだよ!おれは真剣に心配してるんだぞ!
頬を膨らますエースへ抱きつく。
私がマルコさんに惚れてしまう…という心配?

想いが重いのは、私も同じなのに。
もう。伝わってると思ってたんだけどなぁ。

「エース、私は非力で特別な力もない。悪魔の実でさえ怖いと思う。皆さんのように戦えない。
そんな私が、なにか力になれるなら。エースやマルコさん、親父さまの力になれるなら。それを全力で頑張りたいと思うよ。そこに恋愛の感情はひとつもないの。エースが親父さまを支えるように、私も皆さんを少しでも支えたい」
「…リオ、」
「それと!私がこの世界で一番好きなのはエースただ一人なの!マルコさんを格好いいって思っても、一番愛されたいのはエースなの!」
「………格好いいって思ってんじゃん!」
「そこを切り取られたら困るんだけど!?」
「おれの炎とマルコの炎、どっちが好みだ?」
「何その質問。うーん、能力的には」

飛べるマルコさんかな。
あ、あと治癒できるのも素敵だよね。

「リオ!!!」
「能力的には、って言ってるでしょ!だって飛べるの魅力的だもん!炎はエースが好みです!」
「先におれを挙げてくれよ!」
「どういう嫉妬してるの!?」

なんだか涙目になっているエース。
痴話喧嘩なら仕事終わってから他所でやれよ。
と、コーヒーまで飲み終えたマルコさんから
お叱りを受けたのは…言うまでもない。


What's devil fruit?

悪魔の実、とは?
私には縁のない、大きな力を持った果実。
この海に存在する、不思議な…果実。

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