出会いは勧誘
最初はお客として店に来ていた商船の船長が船旅中の食事を作ることを条件に乗船を許してくれた。
そのあとは海賊を捕まえて賞金を得たり、着いた島で郷土料理を学びながら働かせてもらったりして、そのお金で船に乗せてもらったり腕っ節を買われて船を護衛する代わりに乗せてもらったりした。
そんな感じで1、2年やっていたらいつのまにか偉大なる航路に入っていた。
現在おれミズキ20歳。
偉大なる航路の最初の島にいる。いやおれもよくわからんが偉大なる航路には7つの航路があってそのうちの一つの最初の島…だとか?海賊なんかは記録指針でそれを辿って進むらしい。
おれが今住んでる町には造船所があって海賊なんかもよくくるとか。知識が乏しいおれにお客さんが教えてくれたのだ。おれが今働いている店は定食屋みたいなところで昼には船大工がよく食べに来る。夜は一転してバーをやっていたりもする。店長はバーテンダーでもあって、カクテルの作り方なんかも教えてくれた。すごい…シェイカー片手で振ってる…。
ところで、おれの得意料理は和食だったりもする。この世界で和食と言ってもあまり伝わらない気もするから具体的な料理名を言うことが多いのだが…。
ありがたいことにこの島のお客にはおれの料理が好評だった。
日替わりランチとしてひとつ任せてもらえることにもなった。
メニューはご飯と味噌汁、それからその日市場で仕入れた肉や魚などを使ったメイン料理。これがまあ人気を博していた。ありがたや。
転々と旅をしていると店長に伝えると、ここで作った料理のレシピを島を出るときには置いていけと言われるほどだ。
★☆
今日も昼の1番忙しい時を終えてひと段落。
休憩をもらい店長が作った賄いを食べたあとおれは店の裏でタバコを吸う。
ホントはタバコなんてやるつもりなかったんだけど、気づいたら吸っていた。なんでだっけ。
「ミズキ!」
「お腹すいた〜」
タバコを吹かしているところに来たのは島に住む子供、リンダとジェミニだ。
この2人は双子の姉弟で、よく店にくる。というのも2人に両親はいなく歳の離れた姉がいるのだが、その姉は造船所の事務所で働いており、昼間はは2人だけなのだ。
歳が離れていると言ってもまだ十代で、町のみんなはこの家族をよく気にかけている。
店長もその1人で、2人の様子を確認する意味をこめて昼はうちに食べにくるようにと言っているのだ。2人の姉であるレーラはタダで食べさせてもらうわけにはいかないと毎月一月分の食事代を店長に払っているらしいのだが、店長は1ベルも使わずこの家族にとってあるのだとか。
2人が駆け寄ってきたところでおれは携帯している灰皿でタバコの火を消した。
「あれ、飯まだだったか」
「うん…夢中になっちゃって」
「んじゃ、なんか作るか。何がいい?」
おれは目線を合わせるために2人の前にしゃがむ。
「オムライス!ふわとろのやつね!!」
「リンダはオムライス、ジェミニは?」
「ぼくふわとろじゃないオムライスがいい」
「はいよ。んじゃ、店戻るか」
2人から注文をきいて立ち上がり、手を繋ぐ。
「ごめんね、きゅーけー中だったでしょ」
「タバコ、まだとちゅーだったみたいだし」
ジェミニは申し訳なさそうに顔をむけているしリンダは繋いだ手をぶらぶらさせている。
「お前らが気にすることじゃねえから大丈夫だ」
そういっておれは繋いでいた手を離し、それを2人の頭に乗せた。
「えへへ、ぼくミズキのオムライス大好き」
「わたしも!!」
くそかわ。髪が乱れない程度に撫でた。
流石に裏口から2人連れて入るわけには行かないのでおれはこの双子と再び手を繋ぎながら店の表へと向かうのだった。
★☆
「ミズキっていうのはお前か」
店の表へ向かっている道中、おれは声をかけられた。ここら辺では見ない顔で咄嗟に双子をおれの後ろへとやる。双子もおれにしがみついてきた。
目元にでっかいクマを飼っている帽子の人とキャスケット帽のやつとぺんぎんって書いてある帽子のやつそれから……クマ?
「クマだ…」
「シロクマだ…」
「シロクマですいません…」
「喋った!!」
双子がおれにしがみつきながらクマと会話している。喋れるのかこの世界のクマは。
「おれがミズキだけど、なんか用か」
「お前、うちの船のコックになれ」
「……は?」