プロポーズかよ

うちで働かないか。
このような言葉は行く先々で言われてきた。答えは全てNo。おれは世界を見て回る旅をしているのだ。どこかに留まることなどまずありえないのだ。
だからこの男の勧誘ももちろんNo。

「悪いけど、おれはー…」
「知ってる。旅をしてるんだろ」

店長から聞いたとこの男は言った。店長…。

「だったらなおさらうちはもってこいだ」
「なんで」
「ミズキ、この人たち海賊だよ」
「…海賊?」

おれにしがみついていたリンダが見上げる。

「トラファルガー・ローって言って死の外科医とか呼ばれてるんだって」
「詳しいな、お前」
「なんでそんなことリンダが知ってんだよ」
「新聞に手配書入ってた。お姉ちゃんがイケメンって」

レーラ…

「その子供の言う通りだ。俺たちは海賊で、世界を旅している。聞いたところ、金貯めて商船と交渉してとなかなか面倒なことやってるらしいな。うちにくればそんな面倒なことなくなるぞ」
「その代わり、お尋ね者になるんだろ。略奪とか強奪とかおれは嫌いだ」
「おれだってそんなの趣味じゃねえよ。…同業者には容赦しないがな」
「口だけならなんとでも言えるだろ」

正直、そんな悪い奴らには見えないんだけどなぁ…。シロクマいるし。
海賊も海軍もそれなりに見てきたし、悪い話では無いと思う。でも海賊だ。
お尋ね者で、海軍に見つかったら即逮捕。
それはやだな…でも海賊って、自由な集団だってことは1番よくわかってる。
この男の手配書が出てるってことは結構強いんだろうし、まあそれなりに悪さもしてるんだろう。シロクマはわからんがキャスケット帽のやつもペンギンの帽子のやつも結構な手練れだろう。

「……そもそも、なんでおれなんだ」
「あの店の日替わりランチ、作ってるのお前だろ」
「そうだけど…」
「お前が作った料理が、おれの好みだった」
「はあ?」
「特に味噌汁。おれのために毎日作ってくれねえか」
「プロポーズかよ」
「あ?」

もう一度言うわ、プロポーズかよ。なんだおれのために毎日作ってくれって。初めて言われたわ。
ちらっと後ろに控えている2人と一匹をみるとうんうんと頷いている。

「キャプテンがそこまで言うって珍しいよね」
「いやあ、あれはうまかったよな」

なんて呑気に会話までしている。いやいやいや。

「理由はわかった。けどすぐには返事はできない」
「まあだろうな。俺たちはこの島で船を乗り替えるつもりでな、いま造船所で新しい船を依頼しているところだ。この島のログは2日くらいでたまるが船ができるまではこの島にいる。島を出るまでにお前を必ず口説き落としてやるから、覚悟しとけよ」

それだけ言うとクマくっつけたやつ…トラファルガー・ローたちは背を向けて去っていった。シロクマは手を振っていた。双子は振り返していた。
さて、どうしようか


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