篠突く雨



どしゃ降りの雨。

どうやら今日は台風らしい。

強めの風がぶわっと吹き、雨も朝より強くなっている。皆が足早に移動する中、急ぐわけでもなく、むしろいつもよりゆっくり歩きながら紫陽花はいつもの公園に向かう。

濡れるのは嫌じゃない。

いや、むしろ今日はレインコートも傘も全部捨ててびしょ濡れになりたいくらいだった。


「伊弉冉さん…」


会いたい。

会って、話して、嫌なことを忘れたい。

ホストなんだから、そんなのお手のものだろう。

でも、

いまだに止まらない涙、真っ赤になった目と鼻。自分の姿が異常なのは道行く人の反応でよくわかった。

この状態じゃ彼には会えない。

公園を目の前にしたところで足を止め、少し考えたあとに引き返そうとしたのに、


「紫陽花さん…?」
「……」


もう遅かった。


「なっ…」
「何でも…何でもな…」


ダメだ、それでも涙は勝手にこぼれてしまう。紫陽花の顔を見てびっくりしている一二三から逃げるように急いで背を向けて走り出す。


「…っ……」
「ちょっと…!」


傘を挿して走る人と、傘を捨てて走る人がどちらが早いかなんて、明白だ。

あっという間に追い付かれて、気づいたときには一二三の腕の中にいた。一瞬、抵抗をした紫陽花だったが、どんどん一二三のスーツに雨が染み込み、色が濃くなっていくのを見て大人しくなる。


「早く屋根のあるところにっ…」
「逃げない?」
「逃げないから、早く!」


紫陽花が振り向くと、一二三は濡れたままにこっと笑った。