おそらく三成は浮気をしている。
三成は無駄を嫌う。無駄な残業はしないし、無駄な買い物もしない。ウィンドウショッピングなんて以ての外。
それなのに最近やけに帰りが遅い。どこに行っていたのか聞いても私には関係ないことだと答えてくれない。
怪しいと思い、私の仕事が休みの日に尾行をした。三成の会社の近くのカフェで定時まで待ち、ビルから出てきた三成を追いかけた。
三成は会社から駅まで無駄なく直行し、家まで真っ直ぐ帰ってくる男。
それなのに三成が向かった先は駅ではなくショッピングモールだった。
最初は私のために何かプレゼントを選んでいると思っていたが、誕生日でもないし記念日でもない。私にプレゼントをするタイミングではないのだ。しかも、入ったお店は宝石店だ。私も三成も華美なアクセサリーはつけない。この時点で浮気を確信し、偶然を装って声をかけた。

「あれ、三成?」
「っ、名前、貴様、なぜここに」
「今日お休みだから買い物してたら三成見かけたから。三成こそここで何してるの?」
「別に、何もしていない。見ているだけだ」

どうしてこんなに分かりやすい嘘をつくんだろう。

「他に、好きな人でもできたの?」

あまりにも悲しくて、涙をこらえながら問いかけた。

「…ハァ」
「な、に」
「私が貴様以外を好きになるわけないだろう。今夜渡す予定だったが、これだ。在庫がなかったから取り寄せてもらっていた。結婚しろ、拒否は認めない」

三成の言葉を聞いた店員さんやお客さんが一斉に拍手をし始めた。
私もしかして、こんなにも私のことを愛してくれている人に対してめちゃくちゃ失礼なことを思ってしまってた?
そう思った瞬間、嬉しさと申し訳なさで涙が堰を切ったように溢れ始めた。

「っ、三成、ごめ」
「…拒否は認めないと言ったはずだが」
「ちが、疑って、ごめんなさい…っ」
「気にしていない。だから泣くのをやめろ」
「だって、だってぇ」

いつまでも泣き止まない私に我慢の限界だという顔をし始めた三成をこれ以上待たせないように、私はぐしゃぐしゃの顔のまま一択しかない選択肢の中から返事をした。


マーガレットアイビー