お揃いだなんて許し難い


 高専内の充てられたデスクに向かいながら、休憩がてらに千寿はパラパラと雑誌を捲る。
 女子生徒が楽しげに話していた所に居合わせた際に、自然と会話に参加させて貰えばそのまま貸してもらった雑誌だ。
「あ、いたいた千寿ー、お昼まだだよね?一緒に食べよ」
「お疲れ様です、五条さん」
 ぼんやりとそれを眺めていれば、いつもの調子で入ってきた五条の声に顔を上げる。
「ん、雑誌?珍しいねそんなの読んでるなんて」
「野薔薇ちゃん達が貸してくれたので、休憩ついでに読んでました」
「へぇ……何なに、ピアス特集、ね」
「二人に何か付けてみたらどうか、なんて言われて」
 千寿の後ろから雑誌を覗き込んだ五条にそう説明しながら、自分も再び雑誌に目を向ける。
 若者向けの雑誌らしく、可愛いものや凝ったデザインの手頃な価格のピアス、穴を開ける為の道具や使い方が何ページにも渡って紹介されていた。
「こんなに種類があるんですね、知りませんでした」
「あんまり興味とか無いもんねぇ千寿は。なに、開けたいの?」
「え?うーん……そう、ですね……」
 五条の問いに少しだけ逡巡するように首を傾げる。
 千寿も曲がりなりにも女性である。元々装飾品の類に興味が薄いとはいえ、実際に目にすれば可愛いと思ったり欲しいと思ったりしない訳ではない。
「……開けるの?」
 返事をしないでいれば、五条は再び問いかけた。じっと千寿を見つめながら、大きな手はゆっくりと耳に触れていく。かと思えば、その手はするりと白い髪を掬って撫でた。
「僕はやめた方がいいと思うなあ」
「え、そう、ですか?」
「補助監督とはいえこんな仕事だよ?下手したら耳、引きちぎれちゃったりして」
「それはちょっと、痛いですね」
「でしょ?それに千寿はピアスなんてしなくたって髪飾りとかしてれば充分可愛いよ」
「いや、無くしたり支障があったら困るので仕事でそんな装飾品そもそも付けないですよ……?」
「あれ、褒めたのは無視?」
 ぱたん、と雑誌を閉じれば千寿は軽く机を片付けて立ち上がる。
「まあ、開けてもすぐ閉じてしまいそうなので予定は無いんですけど」
「うんうん、それがいいよ!あ、もし万が一開けたくなったら絶対僕に言ってね」
「……五条さんに開けてもらうのはちょっと」
「いやいやそこは信用してよ……まぁいいや、とりあえずお昼行こ?車出してきてよ」
「分かりました」
 ぱたぱたと部屋を出る千寿を見送れば、五条は机に置かれた雑誌の間に一言メモを添えた。
「……悪いけど、開けさせてやるつもりは無いんだよね。流石に許せないからさ」

「あのクソ教師!」
「どうした大声出して」
 数日後、千寿から返却された雑誌を捲った釘崎は呆れたようにそう声を荒げる。
「真希さん見て下さいよ、千寿さんに貸してた雑誌に挟んであったこのメモ!」
 ずい、と差し出したメモには「あんまり千寿に余計なものつけさせないでよね」と一言添えてあった。
「悟の奴、必死かよ」
 メモを読んだ真希は、小さく笑いながらビリビリと態とらしくそれを破り捨てた。



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