告白


「いたいた、これ先月のバレンタインのお返しな」
「あ、ありがとうパンダ君」
 差し出されたお菓子の詰め合わせを受け取れば、パンダ君の大きな身体の後ろからひょこりと狗巻君が顔を覗かせた。
「しゃけ」
「ふふ、狗巻君もありがとう」
「ツナマヨ」
 狗巻君は少し大きめの箱を此方に渡してきて、ずいぶん奮発してくれたんだなあと少し意外に思った。

 女子寮に戻れば、真希ちゃんがニヤニヤとしながら声を掛けてくる。
「人気者じゃねーか」
「もー。真希ちゃんたら、二人がホワイトデーだからってくれただけだよ」
「パンダはそうかもな、でも棘は違うだろ」
「ええ……?どういうこと?」
 不思議に思って首を傾げていれば、真希ちゃんはくいと顎を動かして先ほど貰った棘くんからの箱を指す。
「それ、開けてみな」
「え、今?」
 静かに此方を見つめる真希ちゃんに、そんなに言うならとそっと箱の中を取りだしていく。
「わあ……すごい綺麗」
 中に入っていたのは、透けるような赤色の、透明の薔薇で。添えられたカードを見るとそれが飴細工だということが分かった。
「棘にしては、随分凝ったことするよなあ」
「へ?なんでこれが……え、あっ」
「ほんと、鈍感だなお前は」
 呆れたような真希ちゃんの言葉に、かあ、と自分の顔が真っ赤になっていくのが嫌でも分かった。
 中に入っていたのは赤色の薔薇の飴細工。それが、三本。
「て、ていうか、バレンタインのチョコ、なんで本命だって分かったんだろう……!?」
 皆のチョコと見た目は殆ど大差なく作ったそれの、一体何処で気付かれたのか。
 これが本当に彼なりの返事なのだとしたら、嬉しすぎて、もったいなくてこの飴細工は暫く食べられそうになかった。



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