常に隣にいたいのは


 今回の任務は自分の等級より少し上の呪霊を祓う。
 多少苦戦しながらも遂行すれば、満面の笑みで背後に立つ先輩をくるりと振り返って見つめる。
「見てください七海さん!どうですか!」
 すると七海さんは相変わらずのしかめっ面で小さくため息をひとつ。そんな所も様になるのでとてもかっこいい。
「何度も言いますが、私は貴女を推薦するつもりはありませんよ」
「え、そ、そんなあ……!」
 がっくりとその言葉に肩を落とせば、解せないと言うような声音で七海さんは続けた。
「猪野くんといい貴女といい、どうしてそう私に推薦されたがるんです」
「そりゃあ、憧れの人に推薦して貰ったら嬉しいじゃないですか、認められたいじゃないですか」
「もう学生でもないんですから、昇級の機会なんて少ないでしょう。そんな事にこだわっていないで昇級出来る時にした方が懸命かと」
「七海さんが冷たい……でもそういう所も憧れます……」
「貴女、だんだん猪野くんに似てきましたね」
 あそこまでは酷くない、と少し頬を膨らませながら軽く服の汚れを落として七海さんの元へと駆けていく。
「もー、七海さんが推薦してくれないから、私いつまで経っても昇級出来ませんよ」
「私のせいにしないで下さい」
「ちぇー」
「……貴女、昇級の制度はちゃんと理解してますか?」
 ふいにそう尋ねられれば、なんの事かと首を傾げる。
「え、現役一級以上の術師二名からの推薦……ですよね?」
「それから?」
「そ、それから?ええと……一級術師と任務……」
「間違っては居ませんが、矢張り推薦は出来ませんね」
「え!?そんな意地悪言わないでくださいよ!」
「……拘っているのは、むしろ私の方なんでしょうね」
「ま、待ってください七海さん、置いていかないで!」

 ──尚、任務に同行するのは推薦者以外の一級以上の術師であり、推薦者は同行することが出来ない。



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