「千寿さん!私雑誌でモデルすることになったの!」
任務終わりの街中で、ご褒美にと五条に新しく出来たクレープを要求した三人。並びに行った五条と、荷物持ちに駆り出された伏黒を待つ間に釘崎は唐突にそう報告した。
「そうなの?野薔薇ちゃん美人さんだもんね、忙しくなると思うけど無理しないようにするんだよ」
きょとんとした顔を直ぐに嬉しそうな笑みに変えてそう答える千寿に、釘崎は顔を両手で覆いながら蚊の鳴くような声で更に続けた。
「……嘘。今日はエイプリルフールだから…ごめん千寿さん」
「え、あ、そうなの?やだ恥ずかしいなあ」
照れたように笑う千寿にごめんなさい!と畳み掛けるように謝る釘崎に、虎杖は少し驚いたように二人を見つめた。
「え、ネタバレ早くない?」
「私の良心が耐えられないわ」
「でも意外だなぁ、真玉さんこういうの引っかからないと思ってたからさー……あっ!なぁなぁ真玉さん、五条先生に何か嘘つかないの!?」
「え?うーん……そういう予定は無いかなあ」
少し困ったようにそう答える千寿に、釘崎も不満げに虎杖に賛同する。
「えー、何で!?普段色々迷惑かけられてるんだから、今日くらいはいいんじゃないの?」
「きっと五条先生だって何か嘘ついてくるだろ、そういうの大好きだから」
「私はいいかなあ。五条さんも、多分普段と変わらないと思うよ」
「ちぇー……ん?そういや二人ってさ、喧嘩はするけど絶対別れるとか言い出さなよね、何で?」
「あ、それ私も思った!」
興味津々の二人に見つめられては、千寿は観念したようにぽつりと話し出す。
「なんて言えば良いかなあ……二人は狗巻君のこと、知ってるよね」
「狗巻先輩?うん、呪言師ってやつなんだろ?」
「私も五条さんも、別に呪言師ではないけど呪術師だから……自分の言葉には一応、気を付けてて。冗談で『嫌い』とか、『別れる』とかは言わないつもりでいるの」
一度痛い目にあったしね、と苦笑しながら千寿は説明を続けた。
「二人も、あんまり軽い気持ちで何か言うのは気を付けてね」
「意外ですね」
「んー?何が?」
店の前で頼んだクレープが完成するのを待っていれば、ぽつりと伏黒は五条に一言告げた。
「今日はいつも以上に面倒くさい事するかと思ってたんですけど」
「あー、エイプリルフール?恵ったらそんなに期待してたの?僕の渾身の嘘」
「別に期待してません。ただ、真玉さんには何かするのかと思ってたので、五条先生の事ですし」
「僕を何だと思ってるの、恵……千寿ねぇ、千寿は未確認飛行物体が飛んでた!とか言っても軽くあしらって来そうだなあ」
残念、とさして残念でもなさそうな声音でそう答える五条に、伏黒は不思議そうに質問を続けた。
「別れようとか、浮気とか、見合いとか……そういう際どい事しないんですね、しそうなのに」
「えぇ、恵は僕にそういうイメージしか抱いてないの?傷つくなぁ」
「傷つくような性格じゃないでしょう、ふざけてないでくれますか。真玉さんだって迷惑そうですし」
呆れたように五条を見つめる伏黒にへらへらと笑っていれば、完成した自分の分を受け取り早速食べ始めながら五条はさらりと答える。
「まあ、千寿には絶対そういう事はしないかな」
「……嘘だって、直ぐにバレるからですか」
「ん?違う違う、その逆だよ。千寿に別れようだなんて言ったらはい分かりました、ってあっさり別れられちゃうもん」
「やっぱり脅して付き合ってるんですか」
「えー?そんな酷いことしないよー。ただ千寿は僕に応えようとはしてくれるけど、僕の事欲しがってはくれないからさー……だから絶対そういう事は僕からは言わないよ」
ぱくりとクレープを口にしながら、五条は淡々とそう告げた。
「あの子はさ、他人が距離詰めてもあんまり拒絶しないかわりに自分から距離は詰めて来ないんだよね。優しさも愛情も皆平等で平均で、だからあの子が欲を出してくれるまで、ちゃんと大事にしてないとだからさ」
「五条先生って、本当……真玉さんに同情します」
全員分のクレープを手に戻りながら、伏黒は千寿の現状に少し心配に思いながら合掌した。
「あ、おかえりなさい」
「真玉さん、五条先生が法を犯してきたら俺たち全力で真玉さんにつきますから」
「え、な、何の話?」