Nostalgia


ハロウィン?


「実家から届きました」
「え、何それひょうたん?」
 千寿が差し出した箱を覗いた五条は、不思議そうに首を傾げて問いかけた。
 箱に詰められたそれはどこをどう見てもひょうたんのような形のそれであり、何に使うのかと手に取れば予想より重みが手にかかる。
「ええと、かぼちゃ?の一種みたいですね」
「千寿の実家はかぼちゃ農家にでもなったの」
「違います」
 どさりと箱を机に置きながら、千寿は添えられた手紙を読み始めた。
「たくさん貰ったから、こっちにも送ってきたみたいですね……甘くてそのままスープとかに出来るみたいなので、早速使っちゃいますね」
「へぇ、甘いの?僕好みの味になりそうで良いね」
「お菓子にも使えそうですね」
「……何?作ってくれるの?」
 にこりと五条がそう聞き返せば、少し逡巡したものの千寿は小さく頷いて見せた。
「消費しないとですし、これくらいならまあ……」
「じゃあ僕も手伝おう、固いから処理は任せなさい!」
「悟さんのそれはズルでは?」
「使えるものを使ってるだけだからズルじゃありませーん」

「うわ、これほんとに砂糖とか入れてないの?甘……いいなーうちのカボチャスープ今度からこれ使おうよ」
「売ってますかね?これ……」
「大丈夫大丈夫、伊地知に探させるから」
「だめですよ」
「ちぇー」
 出来上がった料理を満足気に平らげて行けば、千寿が同時に作っていた菓子も食後にと取り出した。
「あはは、今日は何だかカボチャ尽くしだね」
「そういえばそうですね」
「ん、こっちのお菓子も美味しいね」
「ありがとうございます」
 感想に安堵したような顔をする千寿をじっと眺めれば、ぱちりと黒い目がかち合う。
「どうかしましたか?」
「んー?別に?ただ珍しく僕の休みをもぎ取ってくれたのはどういう事なのかなって聞きたいだけだよ」
 にこにこと告げた言葉に目を見開きながら、段々と千寿の顔は赤く染まっていく。
「……気付いて、たん、ですか」
「そりゃあねえ。しかも至れり尽くせりときた、こんなの何かあるかなって思わない方がおかしいでしょ」
「……言わなきゃ駄目ですか」
「まあ大方の見当はついてるよ、でもねー、折角ならちゃんと千寿の口から教えて欲しいなー?」
「い、嫌です」
 ふい、と顔を逸らす千寿をくすくすと笑いながら抱き上げれば、そのまま寝室へと軽々運んで行く。
「わ、あの、悟さん」
「頑固な所も可愛くて好きだけど、そんなに意地はられちゃうと悪戯したくなっちゃう」
「い、言ったって変わらないくせに」
「まあね!大丈夫大丈夫、ちゃんとここに居るから」
 そっと額に口付ければ、ぎこち無く腕が首筋へと回された。
「約束、ですよ」
「もちろん」



- 7 -

*前次#


ページ: