最近、オロルンの行動がおかしい。
そう言えば周りは「そんなのいつもの事だ」とさして意外に思うこと無くそう返して来るだろう。
そうは言っても、明らかに普段の様子のおかしさとはまた違った違和感を感じるのだ。
普段分けてくれる野菜の種類が、明らかに意図的に限定されていることは、自分の中で充分に違和感のある行動だった。
オロルンから日々同じ野菜を大量に渡されるこの様子は、どうにも違和感しかないのだ。
ある日はトマトが大量に渡される。またある日は、オクラが大量に届けられた。
かと思いきや、今度はセロリだけが大量に渡される。
「えと……こんなに沢山、いつもありがとね」
悪意ではなく善意なのは彼の表情を見れば明らかなため、文句や疑問より先にお礼を口にしてしまう。
そうすると、決まってオロルンは心底嬉しそうに、花が咲いたように笑みを返してくる。
「気にしないでくれ、受け取って貰えるだけで僕はとても嬉しい」
とはいえ、おかしな行動という事には変わりがないのである。
周りもそうなら良かったのだが、どうやら同じ野菜を大量に寄越されるのは私だけだと言われた時はますます謎が深まった。
心当たりがあるとすれば、その行動が始まったのが彼がフォンテーヌから帰ってきてしばらくしてからの事だということ。
フォンテーヌで何があったのだろう、と同行していたイファにも探りを入れてみれば、苦い顔をしながら視線を逸らされてしまった。
「さあ、俺はあいつが考えてる事はまるで分からないな」
嘘である。この顔は何か知っている顔だった。とはいえ迷惑という訳でもなく、何か普段と様子が違うという状況だけでイファを問い詰めるのも違うか、と深追いはしないでおいた。
ある日、また大量に同じ野菜を渡された時。いよいよ我慢がきかなくなって、オロルンに思い切って問いかけてみた。
「あの、オロルン。最近いつも同じ野菜をくれるけど……その、何か理由とか、あったりする?」
きょとん、と目を丸くしていたオロルンは、次第にその顔を赤く染めあげて、落ち着かなさそうに視線を泳がせ始めた。
「……いつから、気付いてたんだ?」
「え、いや、割とはじめの頃から」
「そんな、ずっと気付かれてないのかと思ってたのに」
信じられない、と驚いた顔をするオロルンにこっちが信じられない、と少し呆れながら更に問い掛ける。
「やっぱり何か意味があったの?」
「意味……あってないようなものだから、気にしないで欲しい」
「いや流石に気になるよ」
ここまで付き合ったのだ、そろそろ教えて貰いたいと詰め寄ればオロルンは観念したかのように口を開いた。
「……その、フォンテーヌには、花に意味を持たせて贈る習慣が、あるそうなんだ」
「はあ、花に意味」
「レインボーローズという花なら、情熱とか、出会いという意味を持たせているらしい。それで、フォンテーヌで知り合った人に教えて貰ったんだ。野菜にもそういう意味を持たせている本があると」
オロルンの説明に、段々と話が見えてきた。つまり、彼が渡してきた野菜達には明確な意味があったらしい。
「それで、キミは知らないだろうからと思って、僕の自己満足で……勝手な事をしてごめん」
「え、いや、別にいいんだよ。野菜はありがたいし、いやまあ、最近は同じのばっかり貰うから何でだろうなってだけだったから」
「……そうなのか?」
「そうだよ。ところでさ、私にくれてた野菜の意味って何なの?書いてあるんだよね」
謎が解けた所で、新たな疑問はその野菜にオロルンが込めていた意味である。一体彼は私に何を伝えていたのか当然気になると言うもの。
「……言いたくない」
「散々人に寄越しておいて何を言ってるんだろう」
フードの下の顔を真っ赤にさせながら、この期に及んでオロルンは最後まで白状するつもりは無いらしい。
「僕の口からは、その、言い難いからこうやっていたんだ、わかって欲しい」
「そんな斬新なメッセージは流石に分からないよ」
「その、誤解されたくないからこれだけは言わせて欲しい、決して悪い意味を込めていた訳じゃない、これは本当だ。ばぁちゃんに誓ってもいい」
「黒曜石の老婆に誓うほど……?いや、うん、悪口だとは思ってないけど」
「それなら良かった。じゃあ僕は用があるからこれで」
ほっとしたような顔をしたオロルンは、そそくさと逃げるようにその場を逃げ出してしまった。