目を覚ますと知らない場所にひとり倒れていた。
言葉は理解できるのに、自分を囲む周りが何を言っているのかはっきり理解できない。
そんな様子に戸惑っていると、突然強く手を引かれる。
「フォンテーヌへようこそ!このフリーナが直々に、キミにこの国を案内しようじゃないか!」
お人形のような美しいその人は、フリーナと名乗り私の手を引いて楽しそうに歩き出した。
頬が落ちそうなほど美味しい料理、きらきらと光が反射して美しい水の中、楽しいお芝居に可愛い動物や見たことの無い生き物たち。
「どうかな、気に入ってくれたかい?」
「すごいね、テーマパークみたい」
道案内をする途中で、少しずつフリーナはこの国のことや自身のこと、私が違う世界から来てしまったのだろうと言うことを話してくれた。
最初は不安だったけれど、フリーナはそれを上書きしてくれるかのように沢山楽しいことを教えてくれた。
「キミは運がいいね、今はちょうど映影ランドも本格的に動き始めたところだったんだ」
「えい…ランド……?じゃあ本当にテーマパークだったんだね、すごく楽しいもん」
「そうだろう?気に入ってくれて良かった」
にこにこと嬉しそうなフリーナに、こちらもつられて笑みが零れる。ああ、こんなに楽しいなら、ずっとこのまま──。
ぱしゃん。と水が跳ねる音にハッとする。
周りを見れば世界は茜色に照らされて、そろそろ夜が訪れようとするような時間だった。
「……どうしたんだい?」
「あ、いや……もう遅いし、暗くなる前に、かえらな、きゃ」
心配そうな表情でこちらを覗き込むフリーナを、思わず両手で押し退ける。
ふらふらと立ち上がってあてもなく歩き出そうとすれば、慌てたフリーナに初めて会った時のように手を引かれた。
「ま、待って!帰るってどこに」
「どこって、わたしの家に、はやく帰らなきゃ」
「……だめ、駄目だ。せっかくキミに会えたのに、やっと一緒に居られるのに!?」
「え、フリーナ……?」
握られた手に力が込められる。ずっと隣で楽しそうに笑っていた彼女からは想像も出来ない冷たい瞳に、思わず背筋が震えた。
「そんなこと、許さない」
白く細い指が頬に触れる。少しひやりとするその手はそのまま上へと運ばれて、ゆっくりと目を覆った。
「……ほら、目を開けて。外はまだこんなにも明るいんだ、帰るなんて勿体無い!」
「……あ、あれ?」
「ふふ。全く、キミにここを案内してからまだ一時間も経ってないじゃないか、さっきのアトラクションが薄暗かったから時間を勘違いしてしまったようだね」
「え、あ、そう……だったみたい」
燦々と昇っている太陽を見て戸惑いながら、先程の様子が嘘だったように笑うフリーナに頷いた。
「それじゃあ次に行こうじゃないか!大丈夫、キミはただ僕の隣に居てくれればそれで良い」
嬉しそうに手を引く彼女を見つめながら、ぼんやりとそれが一番良い判断のような気がしてくる。
「一日はまだまだ始まったばかりさ、ずっと僕と遊ぼうじゃないか、そうだな……日が沈み、月が昇るその時まで!」