あたしが貰ってもいいよね


「重いって言われちゃった」
 温泉でちびちびとショコアトゥル水を飲んでいれば、ぽつりと少女は落ち込んだ様子で呟いた。
「この前出来たって言ってた彼氏?なにそれ、ひどくない!?」
「い、いいのムアラニちゃん。私もちょっとは自覚あるし、我慢すれば良いだけだから……仕方ないのかなって」
「仕方なくなんかないよ!君のどこが重いって言ってるわけ?」
 むす、と不機嫌な顔で迫るムアラニに圧倒されれば、戸惑いつつも彼女は記憶を掘り起こして説明する。
「え、っと……デートの時、お揃いのアクセサリーが欲しいって言った時とか」
「良いじゃんお揃い!お互いがお互いのものだって目印でしょ!?」
「出掛ける時は誰と一緒か後からでも良いから知りたいって聞いた時とか」
「当たり前じゃん、疑ってるんじゃなくて何かトラブルに巻き込まれて欲しくないから聞いてるだけなのにね!」
「……お弁当作ったら、いらないって言われちゃって」
「……し、信じられない!君が作ったお弁当なのに!?何それずるい、いらないんならあたしが貰いたかった〜!」
 ぎゅ、と腕を回して抱き締められればまるで自分の事のように怒ってくれるムアラニに、どこか溜飲が下がっていくような気がした。
「ありがとうムアラニちゃん、話したらちょっとすっきりしたかも。今度もうちょっと彼と話してみるね」
「えー……そんな必要ないよ、君の愛情ぜんぶそうやって雑に扱うなんてあたし黙って見てられない」
 優しく握られた手にどきりとすれば、不満そうな表情はそのままに真剣な眼差しで見つめられる。
「ムアラニちゃん……?」
「あたしとしようよ。お揃いのアクセサリーも、デートも、一緒に作ったお弁当を食べるのも。君は重くなんかないんだってあたしが証明してあげる」
「いや、そんな、悪いよ。ちょっと彼に断られただけなのにムアラニちゃん巻き込むようなことは」
「迷惑なんかじゃない、あたしは今聞いた事ぜんぶ君と心の底からしたいって思った」
「……っでも、私ほんとに重いから、ムアラニちゃんの時間全部奪っちゃう」
「そんなのぜんぜん重くないんだからね、あたしとずっと一緒に居たいって思ってくれるなんて可愛い以外のなんでもないんだから!」
 重ねられた手がそっと頬に伸びていく。壊れ物を扱うように触れるムアラニは笑みを浮かべながら呟いた。
「……ね?君のしたいようにしていいんだよ」
 そっと触れたそれは少しだけ、ショコアトゥル水の味がした。



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