機嫌よく鼻歌を歌いながら、カタカタと小気味良い音を立てて動くそれを眺める。
「ずいぶん楽しそうだな」
「あっ、キィニチ!ねえ見てこれ」
後ろからかけられた声にニコニコと振り返れば、眺めていたそれをキィニチの目の前に掲げて見せた。
「これは……アハウか?」
「そう!シロネンに頼んで作ってもらったんだ」
木材で出来たアハウを模したそれを、自慢げに説明すれば呆れたような表情を向けられる。
「お前がそんなにアイツに信心深いとは、知らなかったな」
「そういうわけじゃ無いんだけど……ほら、アハウの中身はアレだけど、見た目は凄く可愛いと思わない?」
「可愛い?あんなヤツの何処が?」
「オイ!キィニチ!!吾輩の崇高な姿になんか文句でもあんのか!?」
飛び出すように現れたアハウは、聞き捨てならないと言いたげに顔を真っ赤にしながらキィニチに抗議する。
「お前より、仔竜たちの方がよっぽど可愛らしいと俺は思うけどな」
「な、なんだとテメェ……」
「まあまあ、そんなに怒らなくたって良いじゃん。ほら、私はこれ可愛いと思ってるよ」
二人を宥めながらアハウにも同じように人形を見せびらかせば、しばらくの間じっとそれを観察してふいとそっぽを向いてしまった。
「フン、確かにそっくりな作りだが、こんなもんじゃオレ様の素晴らしさは半分も伝わらないな」
「えぇー、けっこう良くできてると思うんだけどなあ」
「……それに」
「ん?何か言った?」
「オレ様がもっと面白いモン用意してやるって言ったんだよ」
そう言い捨てたアハウは、そのままふらふらとその場を離れて行ってしまった。
「アイツの態度はいつもの事だが……あまり妙な事を吹き込まれるなよ」
「わかってるよ、キィニチも心配症だなあ」
カタン、と握っていた人形を手持ち無沙汰に弄りながら、キィニチの言葉を軽く受け流した。
その日の夜、カタカタと響く物音に目が覚める。
「ううん……なんの音……?」
かた、と伸ばした手に触れた物を目を凝らして観察すれば、シロネンから貰ったアハウの形をした人形──に、よく似た別の人形がそこに転がっていた。
「え、なにこれ……?私ひとつしか作ってもらってないはず」
転がっていたそれを持ち上げてみれば、鮮やかな色とサングラスをしているアハウと違って、単色に塗られたそれはつぶらな瞳でこちらを見つめている。
「これも結構可愛いけど、なんでこんなのが家にあるんだろう……?」
心当たりのないその人形を抱えながら考え込んでいれば、じわりと抱きしめた腕が熱を帯びる。
かと思えば、小さな瞳は目が眩むような光を放ち出した。
「──え」
蹴破るように扉を開けて、キィニチとムアラニは部屋の中をくまなく観察していく。
「ねえ、やっぱりここにもいないよ……あの子、一体どこ行っちゃったんだろう」
「数日前に会った時は、普段と変わらない様子だと思ったんだが……」
家主の居ない部屋の中、かたん、と物音がする方へ自然と二人は目を向ける。
「って、なぁんだ……あの子が持ってたアハウ人形か、びっくりしたあ」
「……なあ。俺が見せてもらったのは、本人そっくりの人形だけだったんだが、こっちは一体何だ?」
「え?あたしもこっちは初めて見るかも、自分でも作ってたとか?」
床に転がったつぶらな瞳の人形を手に取ったキィニチは、そっと卓上へ置き直す。
「とりあえず、しばらく家にも帰ってないみたいだな、もう少し探す範囲を広げて……」
「おばあさまにも手伝ってもらって……」
二人が去った静かな部屋の中、人形のをじっと見つめるアハウは楽しげな声で呟いた。
「そんなにこの姿が気に入ったんなら、お前も同じになれば良い、嬉しいだろ?」
小さな人形は、何も言わない。