その愚かさもいとおかし


 ナタでの物語も半ばに差し掛かる頃。
「お、お前……本当にキィニチか?」
 そう不安げに問いかけるパイモンから画面が切り替わり、今まで見たことの無い表情で、動きで、キィニチは動き出す。
「吾輩は偉大なる聖龍クフル・アハウ!ようやく完全復活したぜ」
 その言葉を眺めながら、ついこの間まで散々討論されていた題材について決着が着いてしまったな、とぼんやりと画面を眺めて話を聞いていく。
「やっと力も全て取り返したからな、それじゃあ早速──」
 次のテキストへ送ろうとボタンを押したものの、それきり誰も喋らず、画面も此方を向くキィニチの姿をしたアハウのアップで止まっている。
 よくよく見れば、画面はくるくると読み込み中の表記が映し出されていて、思わず小さくため息をついてしまった。
 やはりみんな続きが気になるのだろうか、プレイヤーが多いと時々こうやって回線が落ちてしまう。
 こうなっては待つ以外何も出来ず、とはいえただ待つことが苦手なためにカチカチと回線を繋ぎ直したり、意味もなくボタンを動かしてみたりと無駄な足掻きをしてみる。

「──なあ、良いだろ?オレ様と一緒に来いよ」
 ようやく話が進み出したと思ったら、キィニチもといアハウの言葉にあれ?と首を傾げていく。
 さっきの会話と繋がらない、まさか読み込んでいる最中に話まで飛んでしまったのか。
 最近追加された会話ログがあって良かった、と慌てて会話ログの表示をしてみるものの、それもあまり意味は無かった。

「縺翫∪縺医′縺翫l繧偵h繧薙□」
「縺溘>縺九r縺ッ繧峨∴」

 見事に文字化けしている。これは後で誰かがアップした動画で確認するしかないな、と仕方なく話を進めることにする。
 気を取り直してコントローラを握れば、問いかけられている言葉に対して、旅人の選択肢はふたつ表示されていた。

『怪しい…』
『アハウについて行く』

 どうせどちらを選んでも話が進むなら、こっちの反応が見たい、とアハウの誘いを断ってみる。
「おい、オレ様の反応でも見ようってか?それとも本気で警戒してんのか……まあいい、ほら、もう一度だけ聞いてやるよ。オレと、一緒に来るだろ?」

『アハウ様の仰せのままに』
『いいよ、一緒に行こう』

 やはり拒否権の消えた選択肢にくすりと笑いながら、ここはノリよく言ってみようと少しふざけた方を選んだ。
「いい心掛けじゃねえか、今後もそうやって吾輩を敬うように!何せお前が──」
 そう言いかけた手前で再び画面はフリーズする。
 せっかく良いところだったのに、と肩を落とせば 少し考えて電源に手をかける。
 続きが気になる所だけれど、こう何度も止まってしまってはやる気も失せてしまうというもの。また暫くしてから遊び直そうと思っていれば、ふいにスピーカーから荒い雑音と共に何かが聞こえた。

「おい!お前……縺ォ縺偵k縺ェ…!」

 びくり、と思わず肩が跳ねる。音声だけ聞こえているのだろうか、それにしてもタイミングが心臓に悪い。
「お前が、言ったん、だろ、何でも捧げるって」
 雑音が段々とクリアになっていく中で、その言葉に思わず画面を見る。完全に真っ暗になってしまったそこに、何故か薄気味悪さを感じていく。
「やっと力も、全部取り戻したんだ、お前の望みを叶えた対価を貰う時だろう?」
 さっと血の気が引いていく貴女は、それでもその場から動けずにその声に耳を傾けてしまう。
「キィニチの野郎が邪魔してたっていうのによ、お前が何でも捧げるから来てください!なぁんて言っちまうんだもんなぁ?」
 遠く彼方から響くその願いに、応えてやらないだなんて野暮だとアハウはからからと笑い声を上げていく。
「見てたんだろ?オレ様のことずーっと。たまに小っ恥ずかしいことも言ってたな、おかしいったらありゃしねぇぜ」
 まるで幽霊でも見ているかのような彼女の様子をよそに、アハウは楽しげに話を続ける。
「っと、まあそんな話は後でいくらでもしてやるよ。喜べ、これからは吾輩自らお前の世話をしてやろうじゃないか」
 再び気味の悪い雑音が響いていけば、アハウは見えない「何処か」に手を伸ばしていく。

 嗚呼、交わる事がない等とタカをくくって不用意な発言をするなんて!



 おまえは ほんとうに バカだなぁ



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