間違えてもっていかれないように


「最近、自分の物に付ける目印用の飾りが流行ってるんだって!」
 見て見て、と楽しそうに話すムアラニの手には、小さなざぶざぶサメくんの飾りが握られていた。
「これを付けてね、自分の物がどれか分かるようにするの、可愛いでしょ?」
「へぇ、可愛い〜!ざぶざぶサメくんならムアラニのなんだなってすぐ分かるもんね」
 持っていたカップに括り付けて見せながら、ムアラニは楽しげに飾りを見せてくる。
「今度カチーナちゃんの飾りも作ろうって言ってたんだ、キミも一緒にどう?」
「いいの?じゃあ私も何か作ってみようかなあ」
「──何を作るんだ?」
 不意に後ろからかけられた声に二人で顔を向ければ、荷物を手にしたキィニチが立っていた。
「あ、キィニチ!今日は仕事中?」
「いや、このムアラニ宛の荷物で最後だ」
「わ、忘れてた〜!わざわざありがとうキィニチ」
「仕事だからな。それで……何か作るのか?」
 ムアラニへ荷物を手渡したキィニチは、再度質問を繰り返す。
「今、目印にする飾りが流行ってるでしょ?カチーナちゃんと三人で作ろうかって話をしてたの」
「そうそう、可愛いの作ろうねって」
「目印……ああ、よく大勢で同じ物を使う時にって最近流行りになっているあれか」
「キィニチも作る?」
「いや、俺はそういうものは別に使わないだろうから」
「そっかあ」

 ──そんな話をしてその日は解散し、数日後に自宅にキィニチが訪ねて来た。
「あれ?キィニチ、どうしたの」
「お前に渡したい物があって来たんだ」
 そう言いながら、キィニチは鞄から何かを取りだし距離を縮めて来た。身体に回された腕に反応出来ずにいれば、またすぐに距離は離れていく。
「……うん、よく似合ってる」
 満足そうな顔でこちらを見つめる彼の視線を辿れば、自分の首元には覚えのない首飾りがかけられていた。
「え、これどうしたの?」
「シロネンに教えて貰って作ったんだ、受け取ってくれると有難い」
「わ、わあ〜、ありがとう!嬉しい!」
 上機嫌に下げられた首飾りを眺めれば、ふとどこかで見たような、と記憶を辿る。
「……あ、これ、キィニチのピアスと同じ形だね?」
「お前は耳に穴を開けていなかったから、首飾りの方がいいと思ってな」
 そこまで考えてくれたのか、と彼の気遣いに嬉しくなりながらも、唐突にこれを贈られたことには未だ疑問が残る。
「でも、なんで急に?私誕生日でもないし……お礼もしたいけど、今何も用意できるものがないし」
「俺がただ贈りたいだけたったんだが、そうだな……」
 真っ直ぐにこちらを見つめる瞳に気恥しさを感じていれば、彼の手が再び伸ばされするり、と自分の腕に付けていた装飾品を丁寧に外していく。
「代わりに、これを俺にくれないか」
「え、腕輪?別にいいけど……」
「ありがとう」
 外された腕輪は、そのままキィニチの腕へと付け直される。少し華奢なデザインのそれを身に付けているキィニチを不思議そうに見ていれば、彼は悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
「自分のものに付ける目印、だったか?」
「……っえ、あ、えっ!?」
 彼の言葉に、数日前の会話を思い出してしまえば途端に顔から熱が吹き出してしまうかと思うくらい、一気に体温が上がった気がした。



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