ハロウィンネタ


「トライアル・オア・トリート!」
 出会い頭、彼女は仁王立ちしながら高らかにそう告げた。
 自信満々な表情でこちらを見つめる様子にくすりと笑みを浮かべながら、持っていた箱を差し出した。
「はい、どうぞ」
「こ、これって、あの限定ケーキ……!?い、良いのかい!?」
「強請られちゃいましたから」
 キラキラと目を輝かせる様子に準備しておいて良かった、とほっと胸を撫で下ろす。
「ところでフリーナ様」
「なんだい?早く家に帰って僕はこのケーキを食べたいんだけど……」
 そわそわと分かりやすく落ち着きのないフリーナ様に笑みを浮かべて、ゆっくりと口を開く。
「トライアル・オア・トリート」
「……えっ」
 途端、きょとんと間の抜けた表情に変わるのを少し面白く見つめていれば、フリーナ様の顔色はどんどんと青くなる。
「き、君に言われるのは考えてなかった……どうしよう、今は手持ちが、ええと、その」
 言い返されることを予想していなかったのか、どうしたものかと慌てふためいていたと思えば、何だか切なそうな顔で渡したケーキの箱を再びこちらに差し出してくる。
「す……すまない……何も持ってなくて……だ、だから、これは君に返すことにするよ……これでおあいこって、ことで……」
「もう、そんな顔しないでください。これはフリーナ様にあげたものですよ」
 差し出された箱をそっと押し返せば、困ったような顔でこちらを見上げてくる。
「で、でも、それじゃあ君にあげられるお菓子は何も」
「お菓子はいらないので、この後お茶をご馳走様して貰えませんか?そのケーキ、二つ入っているので」
 そう続ければ、今度は段々と花が咲いたような笑顔に変わっていく。
「も、もちろんだとも!そうと決まれば早速行こう!」
 嬉しそうに手を引くフリーナ様の手を握り返せば、今度は照れたように頬を染めて、そっと力が込められた。



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