夏の終わり、秋の香り
溶けたアイスが手首を伝う。秋の始まりを知らせる金木犀の香りが鼻を擽るこの頃に、夏を惜しんで口の中で溶ける冷たさを味わう。夏は嫌いだ。汗が皮膚に滲む不快感は言葉に出来ない程だし、暑さに弱い私の体はすぐにショートを起こしてしまう。それでも外から聞こえる虫の声がなくなるというのは、私を何処か寂しいような気にもさせた。だからと言って夏を好きになるわけではないけれど。
ダニエルも私も、夏になるとスキンシップをほぼしなくなる。汗で湿った肌と肌が触れ合うのは情事の時だけで充分だ。付き合って間もない頃、夏の最中手を繋ごうとして振り払われたことを覚えている。あの時から夏の間のスキンシップは、よく冷えた部屋の中だけでしか許されていなかった。2ヶ月間のお預けを食らったのだ、これくらい許されるだろう。アイスの棒を路上のゴミ箱に指で弾いて投げ入れる。騒がしい街の真ん中を歩く彼の腕にしがみついて手を絡めた。顔を見上げてみれば満更でもなさそうな表情を浮かべるダニエルが瞳に映り、ぶわりと愛おしさを込み上げさせた。冷える風が頬を撫ぜる。繋いだ手は今度こそ振り払われずに、きゅっと握り返された。