元々俺が花というような柄でもないことは自覚しているが、特別な日に似合うのが花であるということに異論はない。
咥えていた煙草を携帯灰皿に押し込めば花屋に入り、軽く片手を上げて店員を呼び止める。
「悪い、…恋人に花を贈りてえんだが、何か適当に見繕ってくれるか。」
店員は顔を明るくして「喜んで!」と声を上げた。
メインの花は何がいいだの、恋人のイメージはだの、どんなところが好きですかだの、何かと尋ねられる質問に答える声にも苛立ちは滲まない。寧ろ、あいつの事を考えながら構成される花束はやけに輝いて見えた。
「メインは、…こういうのは薔薇が定番なんじゃねえか?」
「…、喧しい奴。良く言えば賑やか。別に静かに出来ねえっつうわけじゃねえんだがな。」
「どんなところって、…ンなことも花束に必要なのかよ。…、ーーーーーーーー。」
完成した鮮やかな色をした大きな花束を持って街を歩けば見覚えのある顔から冷やかしの言葉が飛んでくるが無言で中指を突き立ててやれば静かになった。
見晴らしの良い広場。この場所に来るのも随分久しい。
最近は仕事ばかりで構ってもやれなかったな、と苦笑が溢れた。それでも彼奴のことだ、「もう、仕方ないな〜」と冗談混じりに笑うのだろう。いや、これは甘えか?
「全部、終わったぜ」
錯乱した
別にこの街じゃ特別珍しい話でもない。住民にとっては4桁5桁も当たり前の死亡者リストの中の一行になるだけだ。…飛び散る血飛沫を横目に「問題無し」と報告したポリスーツにとっても。
「今日、その薬物を卸していた元締めの組織の一斉摘発が成功して、全構成員のムショ行きが決まった。
報告を怠った警官は組織との繋がりが発覚しそのまま逮捕、情報漏洩の可能性も浮上して極刑に処されるだろう。」
俺が彼奴に報えているのかはわからない。彼奴がもし俺の手ずからの復讐を望むなら、と、思いかけてやめた。
俺はダニエル・ロウだ。彼奴の、"春秋あき"の惚れたダニエル・ロウのまま、犯人に手錠を掛けた。
それが俺に出来るなかで一番、彼奴の死に報える方法だ。
「あき。」
名を呼ぶと、返事をする様に風に吹かれて花弁が揺れた。