刹那

今日はライブラの打ち上げ…の、はずだ。
私はダニエルと二人、テーブルの端でグラスを煽っていた。
当たり前の様にいますけど、あなたHLPDですよね?なんでいるんですか?
そんな風に顔を見上げると、俺が一番聞きてえよと言いたげな目で見下ろされる。
聞き慣れた笑い声、暴君に抗う少年の声、穏やかに交わされる言葉。全てが混ぜこぜになった空間に何故かふと、虚しさを覚えた。

「……ここが紐育に戻ったら、…もうライブラじゃいられないんですよね」

ダニエルは私の言葉の続きを待つ様に、アルコールの入ったグラスを傾ける。

「人種も、種族も、生きてきた道もばらばらの人たちがここにいるのは、…ここがWヘルサレムズロットWだから。…わかってはいるけど、さみしいなあ…」

しまった。この言葉は、帰る場所もない女が言うには少し重すぎたかもしれない。気付いたときにはもう遅く、既に口から零れ落ちた言葉を誤魔化す力など私は持っていなかった。
ダニエルは少し目線を上に上げたあと、ゆっくりと口を開いた。

「これだけ街が変わったんだ、紐育に戻ろうが何だろうがそう簡単にハイ元通り、っつうわけにゃいかねえだろ。」
「…そうかなあ」
「…それに、起こってもねえことの心配なんざ、お前や俺が幾らしたところでどうにもならねえよ」

グラスをテーブルに置くと、ダニエルへもたれかかる。皆の前でしたら怒られるかもしれないと覚悟してもたれたけれど、意外にもダニエルは私の背に腕を回して、髪をそっと撫でた。


きっとこれは、誰にも許されないわがままだ。

_どうか、ここがいつまでも混沌の街であれと。