別離


※悲恋

「…………は?」

騒がしいはずのダイナー、周りの音が一瞬で止んだような気がした。
「あきが元の世界に還った」
スターフェイズは俺の目をしっかりと見据えて言葉を吐き出した。
突然だったと。あきの体から魔術痕が浮き上がり足先から消滅した。そう聞かされれば何も言えない。迷惑を掛けたね、と口先だけの謝罪を告げるスターフェイズに俺は「いや、」と返す事しかできなかった。
いつかこんな日が来ることは理解していた。元々彼奴は次元超越者だ。ヴェネーノの様に「行って」帰って来た人間もいる。ならあきが帰ることも想定内だった。いや、想定より少しあっさりしたものだった、それだけだ。
俺の事を「ダニエルくん」と呼ぶ人間は彼奴しか居なかった。10以上も年下の人間にそんな呼び方をされて嫌じゃないのかと、同僚に聞かれたこともある。だが、不思議と不快感は感じなかった。ずっと前からその名で呼ばれて居た様な、そんな気がして。
どこに行くにも俺の後ろを付いてきて、好きだ好きだと騒いで居た。ああ、結局俺はまともな返事を彼奴に返していなかったな。
彼奴の存在がこんなに大きいものだとは思っていなかった。自嘲の笑みを浮かべ、溢れそうななにかを珈琲と共に飲み下した。