息が詰まる
※不穏
「責任、取って下さいよ」
紫煙を燻らせる男の隣で、小柄な女がぽつりと呟いた。
「………ア?」
再び煙を吐き出した男___ダニエル・ロウは理解が出来ないとでも言いたげに首を傾げる。なんの責任だ。そう口に出そうとしたダニエルの言葉を女は遮る。
「…副流煙って、主流煙より身体に悪いんですよ?」
つまり、女が言いたいのは"副流煙は身体に毒だからそれを吐き出しているダニエルは責任を取るべき"ということだろう。
女は濡羽色の睫毛を持ち上げ、射貫くような瞳でダニエルを見つめた。
本気ではないのだろう。この女は利口か阿呆かで言うならば阿呆の部類だが、ド阿呆ではない。そう、そんな無茶な論理で迫って来るような女ではないのだ。
それを、ダニエルは知っていた。
気持ち悪い程に静かな部屋の中、ダニエルが静かに熱の篭った息を吐き出した。そして女の聞き間違いでなければ、確かにダニエルは「仕方ねえな」と口にしたのだ。
「…真っ黒になった肺ごと迎えてやるよ」
女____春秋あきの、今にも泣き出しそうな瞳が揺れる。
だにえるくんは、ばかだなあ。細く震えた声は最後まで続く事なく苦味の広がる口付けで塞がれた。
_______随分、絆されちまったな。
足元に転がる死体なぞ、意識の外へと出て行く程に。