幸せの便り 2


「ベジータ…」
ベジータがブルマの部屋に入ると彼女はまだ起きていた。
深夜とまではいかないにしても最近のブルマなら『仕事が忙しかったから疲れた』と言って寝床に入っている時間帯だ。
けれど今は机に向かい何やら書き物をしている。
彼はその彼女の横に並ぶと何を書いているのかと彼女の手元を覗き込んだ。
「これ?友達に手紙を書いてるのよ。結婚式の招待状を受け取ったんだけど、結婚式まではまだ時間があるし、先に御祝いの言葉だけでも伝えておきたくて。」
なるほどな。お節介な彼女の考えそうな事だ。
自分ならば式の当日に伝えれば済む話だろうと思うが、この女はそれまで待てないらしい。
まあ、どうでもいいことだがなとベジータは鼻を鳴らした。
「ほらまたそうやって…友達は大事にしなきゃいけないのよ?て言ってもアンタにはわからないか。友達居なさそうだもんね」
辛辣なブルマの物言いにベジータは眉を寄せる。
今日の彼女は何処となく機嫌が悪いようだ。
困ったなとベジータはどすんとベッドに腰を下ろし足を組んだ。
こういう時のブルマはベジータと一緒にベッドに入ろうとしない。
ならばこの部屋を出て行けばいいだけなのだが、何故かそうしたくない自分がいる。
「まだ掛かるのか?」
「さあね」
彼の方を見ようともせずブルマは曖昧に答えた。
その態度がベジータには気に食わなかった。
ベジータは苛々した気持ちを隠しもせず立ち上がると彼女の腕を掴みその体を机から引き離す。
「ちょっと!何するのよ」
何するも何も今更聞かなくてもわかるだろ?と口の端を吊り上げた。
それにブルマは嫌そうな顔をする。
「今日はそういう気分じゃ無いの!」
「ならばその気にさせるまでだ。」
言うが早いか彼女の顎を掴み深く口付ける。
そして次の瞬間には彼女をベッドに押し倒した。
「んもう〜」
何だその牛が鳴くような声は。色気もへったれも無いなと思う。
まあ乗り気では無かったと言うのだから仕方ないのかもしれないが。
「本当に嫌なんだってば!」
ベジータの胸を押して離れようとするブルマにそうはさせるかと彼女の手首を掴んでもう一度深く口付ける。
口では嫌だ嫌だと言う癖にこうすれば彼女がそれに答えずにはいられないことを彼は知っていた。はずだった……
ブルマの口内に舌を滑り込ませ彼女をゆっくりと味わおうと考えていた時、彼の舌に鋭い痛みが走った。
「いっっ貴様何しやがるっ!?」
思いっきり舌を噛まれたのだ。すぐさま彼女から離れ口を手で覆う。
勿論、彼の目は彼女を睨み付けたままだ。
「だって…無理矢理しようとするからじゃない!」
だっても糞もない!とベジータは怒鳴り散らしたい気分だった。
彼は女の気分が乗らないからと自分の欲求を我慢するような男ではない。
それは彼女自身が一番よくわかっているはずでは無かったか?
それでも彼女は彼に抱かれる事を望み、今まで彼に身を任せて来たではないか。
なのに何故、今更そんな反抗的な態度を取るのだ!?
まさかもうこの俺に飽きたと言うんじゃないだろうな?
そんな事は絶対に認められん!
アンタに抱かれるだけで満たされるんだと言っていたではないか!
あれは嘘だったのか!?
初めて、ベジータはその胸に不安が過るのを感じた。
「俺は今までお前を苦しませるような抱き方をした事など一度も無い!」
ひ弱な地球人の女を壊さないようにと彼なりに気遣い、これほど無く優しく接してきたつもりだ。
不満など感じさせないくらいに…とても、とても優しく。それなのに…
「一体、俺の何が不満だと言うんだ!!」
いつも彼女は笑っていたではないか!この腕の中で…
そう、いつも、とろけるような微笑みを浮かべていたではないか!
「でも、結果を気にした事なんてないんでしょ?」
「何…?」
結果だと?彼女が喜ぶ以外の結果など無かったはずだ。
なのにそれ以上の結果を望むと言うのか?どれだけ欲深い女なんだ!
かといってそれ以上の結果など彼は知らない。
女を喜ばせる。それ以上の結果など存在するものか。
だからこれ以上のものを望まれても与える事など出来ない。
「アンタってやっぱそういう奴よね…肝心な事は何もわかっていない」
ブルマが大きく溜息を吐いた。
呆れたと言いたげなその表情がまた彼の気を悪くした。
「言いたい事があるのならはっきり言え!」
意味のわからん御託を並べたてて勝手に呆れるのはこいつの勝手かもしれんが、理由を言わずにそうされるのはムカッ腹が立つものだ。
「わかったわよ。」
ブルマは俯き、数秒間目を閉じるとゆっくりと深呼吸をした。
そして決意は固まったと一回頷くと目を開けてベジータの顔を見た。
「そうよね…ちゃんと言うべきよね。だからちゃんと言うわ」
だから早く言えというのに何故この女は自分をこんなに苛立たせるのか。
それでもベジータは何も言わずただ眉を寄せ彼女の言葉を待った。

「このまま、この関係を続けると……いつかは子供が出来るわ」



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