ぎるぎる 4
さて、調べるか。とギルの体を凝視したベシータだったが、まさにそのタイミングで特別コードを使用したトランクスが重力室に駆け込んできた。
「父さん!ギル、此処に来てるでしょ?………ギル!」
「ギ…ル…?ギルル!?トランクス!トランクス!タスケテ!ベジータキケン!カイタイ!キケン!」
折角戦意を無くし、ぐったりとしていたのにまた暴れだした。
自分の手から必死に逃げようともがきだしたギルをベシータは更に強い力で抑え込む。
「逃がさんと言っただろう?いいからじっとしてろ」
「父さん!ギルを離して下さい」
「駄目だ」
「父さん!」
必死に食い下がろうとするトランクスの表情にベジータはぐっと苦虫を噛み潰したような気分になった。
これではまるでこっちが悪い事をしようとしているみたいではないか。
「ちょっと調べるだけだ」
「調べる?」
「ああ。どんなに強いエネルギー弾を放っても悉く跳ね返してくるんでな」
「えぇ!?」
トランクスは意外だというように目を見張った。
「父さんの攻撃を全て?」
「そうだ」
「そんなのって……。」
俺にだって無理なのに…。トランクスは信じられない気持ちで一杯だった。
ベジータはそれには構わずギルの体を弄り回している。
「そういえば、お前が来る前にコイツはドアにビームも当てていたな。あれは何だ?」
「ああ…それなら、たぶん金属を溶解するビームですよ。だよな、ギル?」
「ギル…」
「俺たちその能力でギルに助けられたこともあるんです。ドアにビーム当ててたのならたぶんギルはドアを溶かして父さんから逃げようとおもったんじゃないかな」
ハハハとトランクスは顔を引き攣らせながら笑った。
見てみると少し扉が溶けている。後で修理しておこうと彼は思った。
ベジータはふんっと鼻を鳴らした。
ここから逃げたところで家の敷地の外までは逃げ切れまい。全く無駄な努力をしようとするロボットだ。しかし…
「さっぱりわからんな。そこらのロボットとそんなに変わらないボディーをしているように見える。どういう事だ?」
トランクスはさっきのエネルギー弾の跳ね返しについて父親が聞いてるのだと気付いた。
しかし、トランクスにもよく分からない。
彼の前でだってギルはそんな能力を見せたことがないのだから。
けれどトランクスはあっ!と重要な事を思い出した。
「父さん!ギルはここに来て何かを食べたんじゃないですか?それで父さんが怒って……。」
そこまで言ってトランクスは押し黙った。
ベジータに鋭い目つきで睨まれた彼はまるで蛇に睨まれたカエルのようで、これ以上何かを言えば危険だと長年の経験からわかっていたからだ。
ベジータは溜息を吐きながら答えた。
「修行ロボットが全滅だ。責任とれ」
「いっ!?……ギル!!アレを全部食べたのか?!」
トランクスは父親が使っていた修行ロボをよく知っていた。
彼も随分前に父親に言われてアレで修行したことがある。言葉こそ話さないがアレはとても厄介な対戦相手だった。
浮遊するそれは自分からは攻撃を仕掛けてくる事は無いが相手の攻撃を瞬時に解析し相手の動きに合わせて不規則な反射攻撃を繰り返す。
しかも数体が組み合わさればその攻撃パターンを予測するのは極めて難しい。
自分が生まれる前に父からの依頼を受けた祖父が夜なべして製作したと以前母親のブルマから聞いたことがあるが、戦いのいろはも知らなかった彼がよくこんな仕様を思いついたなとトランクスは何度も感心していた。
彼は間違いなく世界一の科学者だった。
今はもう現役を退き、会社の経営を娘のブルマと孫のトランクスに任せて自分は妻と一緒に田舎で隠居生活を送っているが。
また近いうちに会いに行きたいなとトランクスは遠くにいる優しい祖父母を思い出し微笑んだ。
しかし、あのロボットを残さず食べてしまったとは…。少なくとも10体はあったはずだ。
アレを10体分以上吸収したとなると今のギルはとんでもない防御力と反射能力を兼ね備えているはず…。
ベジータが苦労するのも無理はない。
何しろ一体でもベジータの攻撃に耐えられるように作られているのだ。
少しはメンテナンスする人間の気持ちも考えてパワーアップしてよねといつもブルマがボヤいていた。
トランクスからしたらあのとんでもなく強い父親が自分自身と戦ってるようなものなんだからサイヤ人の特異体質を思えばそりゃあパワーアップは早いだろうと思うのだが。
まあそんな事は今更言っても仕方のないこと。
戦い好きのサイヤ人を選んだのは母親自身なのだから。
色々と考えが横道に逸れてしまったが、兎に角、今は目の前の問題を片付けてギルを父親の腕の中から解放してやらねば。
トランクスは自分が知る限りのギルに関しての情報を父親に話し始めた。
「というわけで、あの修行ロボットたちの能力はギルに取り込まれたんです。要するにギルは高性能なマシンを食べれば食べるほど強くなれるわけで…」
「……。」
何ということだ!このふざけたガラクタ人形にそこまでの能力があったとは。
以前戦ったセルは他人の細胞を取り込みパワーアップしていくという特性を持っていたが、こいつはそれの機械版というわけか…。
ベジータはまた厄介なものをこの家に持ち込みやがってとトランクスを睨んだ。
こいつはちゃんと躾けておかねば後々大変な事になるのではないだろうか?
というかあのツフル人ーーベビーのことーーが仕切る組織に作られて、よく今まで悪の道に走らなかったものだ。
いっその事、今のうちに破壊するか?一瞬そんな考えがベジータの脳裏を過ぎったが、やはりそれは出来ないと思い直した。
気付けばいつの間にかギルはベジータの元から逃げ出し、今は重力室の中でトランクスを相手に新しく身に付けた能力を披露している。
トランクスが放った気功波を跳ね返しながら彼と戯れているギルを見ながら深く溜息を吐いたベジータはトランクスにある提案を持ち掛けた。
「トランクス、今回そいつがした事を不問にしてやる代わりに条件がある」
その言葉にそれまでギルと遊んでいたトランクスの動きが止まった。
「条件…?」
何か嫌な予感がするなぁと苦笑する彼に構わずベジータは続けた。
「お前は昼間こいつの世話が出来ないんだろう?だから代わりに俺がしてやる」
「えっ」
「勿論、タダでは無いがな。ギブアンドテイクだ」
ニヤリと笑ってそう告げた父親にトランクスは頷いたものの、これは大変な事になったなと今後のギルの生活を思い彼に同情した。
でも、まあ…ギルの自業自得。食べたものの代償だ。
トランクスは更に父親から出された条件にも頷くしかなかった。
ーーー昼間、ベジータとギルの間で起きる事に関して、例えギルが泣きついてきても相手にしない。ギルが悪意を持って壊されようとしていない限り。
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