ラスティカ・フェルチ

 祭りの日にたった一晩だけ言葉を交しただけの、あの素敵な人はきっと魔法使い。
 でなければなぜ私は、あの人の姿絵を数十年経った今も手放せないのか。隣町の背が高い彼に求婚されて、優しい嫁ぎ先の家族と暮らして。子を成してその子が嫁ぎ、今では孫までもが生まれて毎日本当に幸せで。
 それでもあの夜の、透き通るような亜麻色の髪を忘れることはできない。思い出の中の声は甘やかで、あの笑みだけが宝石のように私の心に巣食っている。
 



2022/01/15 魔法使いの約束 
前へ次へ