風早巽
この憎悪と怨嗟の渦巻く学び舎において、光り輝く救いこそが巽という少年だった。彼はひとつも悪くないというのに、風早巽に狂わされて恋に落ちて。すべてを投げうつ人類がこの世にはあんまりにも多い。
きっと彼を恨んで刺しに来る者が本当にいたとしても、風早巽はその人を憎まない。そればかりか有りもしない己の不徳を顧みて、己が進むために灯した篝火の薪にしてしまうのだろう。
もしも彼を傷つける者がいたって、風早巽は揺るがない。むしろ加害者の方が、彼の人生に刺し跡を残したという事実だけを抱えて、暗い壁の中でうずくまるしかないんだ。
過ぎた優しさとは時に残酷だ。ああそれでも、それでも、それでも。風早巽は、まさしく俺たちのアイドルであったのだ。