マレウス・ドラコニア
マレウスとふたり街中を歩いているときに、ふと通りがかる親子連れが居た。ふくふくと愛らしい赤子は未だ乳母車のなか、安らかに寝息を立てている。
「赤ちゃんかわいいね」
「連れてきてやろうか」
その言葉にギョッとして、すぐに思い至る。チェンジリング、いわゆる取り換え子の文化。この神秘が色濃く根付く世界には、未だその慣習が消えていないのかもしれない。目の前にいる彼は次代の妖精たちの君主であるのだから、猶更だ。
「可愛いと思っただけだから大丈夫」
「そうか?」
どこか理解しきれていない様子ではあるが、悪気があってのことではないのだろう。図書室にでも異文化交流のためのガイドラインがないかしら……と思いを馳せたことは、口が裂けても言えそうにない。