木吉鉄平
※死ネタ
あの子が生まれるちょうど1週間前に、あの人は突然帰らぬ人となってしまった。偶然その場に居合わせただけの子供をかばって、なんて。最期までもあの人らしいとみんな口にしていたのは今でも納得がいく。
「随分と鉄平に似てきたよねえ」
おばあちゃんがポツリと呟いた言葉に、庭で駆け回る息子を眺める。あの子が大きくなるたびに、わたしが失った人の面影が滲むのだ。大きな掌、笑うと幼い目じり、優しい声。
「この子はどんな子に育つかな?」
「鉄平に似たら大きい子になるよ」
「うーん、どうだろうなあ」
私の膨れた腹に耳を寄せて、愛おしげに語りかけていたあの日の事を覚えている。きっと私たち、これからどこまでも一緒なのだと。無邪気に信じていた過去の中で二人が笑う。
淡い夢から覚めると、蝉がなく声と日差しばかりが私の上に照りつける。まだあの人のことは、克明に思い出せた。