今剣
幼いころ訪れた神社での夏祭りで、親とはぐれた私をあやしてくれた少年。私が泣き止むまでずっと手を握っていてくれて、いろんなことを教えてくれた。やっと両親が見つかって、このお兄ちゃんのおかげだよとお礼を言おうとしても、もうどこにも姿は見えない。
結婚を機に里帰りした神社で、こんなことがあったと恋人に話す私の後ろから懐かしいあの声が聞こえる。
「あのときのわらべが、おおきくなりましたねえ」
振り返ってみても誰の姿も見えない。心配そうに見てくる恋人に何でもないと返して、境内を後にした。もう迷子になっても泣かないよ。