夜の帳は閉ざされた

ベッドの上で二人して裸でシーツの海に溺れている。いわゆる事後というやつに、向き合ってポツポツと話すこれは世間的にはピロートークと呼ばれるものなんだろう。
 とりとめ無い事を私がポツポツと話して、ギアッチョは私の髪を撫でている。緩く流れる穏やかな時間は、何度経験してもむず痒く幸せだ。

「ギアッチョのセックスって優しいよね」
「……藪からに何だあ?」
「私さ、ギアッチョってすごく激しい人だと思ってたから、初めての時とか優しすぎてびっくりしてたんだよ」
「セックス中に怒鳴り続ける奴は、よっぽどの馬鹿かキメてるかのどっちだろうがよ?何で好いた女との最中に声荒げる必要がある」
「……わあお」

 気恥ずかしくなってギアッチョの胸に飛び込めば、軽く抱き締めるように背中に手を添えてくれる。昼中には氷を纏う胸板が、今は包むように暖かく感じた。
 耳を寄せればトクトクと聞こえてくる心音が、私たちがいまも生きていることを実感させる。

「俺もそうだし、なまえお前もよ、こんな仕事してるんだ、お互いに長生きはしねえだろうなって自覚はあんだよ」
「まあ、そうねえ、暗殺者だからねえ」
「目一杯尽くして、ヨくしてやって、一瞬でもよぉ幸せだって思わせてやるしか、出来ねえだろ」

 思わず身を強張らせたことに、きっと彼は気がついているだろう。粗暴な振る舞いに隠されて気がつきにくいけれど、優しい人だ。懐に入れたものに情深い人なのだ。

「ギアッチョ、貴方のことが好きだよ」
「俺もお前を愛してるぜ、なまえ」

 夜明けなんて来なくていいのに。こうして二人、ぬるま湯のようにいつまでも抱き合っていられれば良いのに。
 キツくキツく目を閉じて、つむじに降る唇の感触を感じて、私たちはいま紛れもなく幸せだった。