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chapter:2




ふと意識が覚醒した。まず感じたのは覚えのある温もり。それから強烈な体の痛み。一瞬息がつまり、それでも声を上げずに押し殺す。痛みをやり過ごしてからそっと顔を上げると、やはり見知った顔。ダンテはわたしを腕に抱いたまま、静かな寝息を立てていた。
体を包むシーツ、薄明るい窓の外。ダンテが運んでくれたのだろうか。記憶を辿り、ああ、いつも通りだったと意識が途切れる直前を思い出す。

今は何も身に纏っていない。昨夜引き裂かれたシャツはダンテが日向に買ってくれたものだった。似合うと褒められ、日向も気に入っていたものだったが、きっとダンテはそのことを忘れている。代わりに、ダンテが処置したのであろう包帯が背の傷を覆っていた。しかし、僅かに身動ぎするだけでかなりの激痛が走る。これは今日一日動けないだろう、あれだけ傷を広げるような真似をすれば当然だが。

「…ん」
「ダンテ?」

正面の彼がぱち、と目を開けた。日向はダンテの名を呼び、頬を撫でる。背から痛みが走ったが、堪えて微笑んだ。

「おはよう」
「…ああ」

彼は少しだけ手に頬を寄せ、それからこちらを見つめた。窺うような視線。曖昧に首を傾げてみせれば今度は彼の掌が日向の頬に添えられた。温かく、大きな掌。

「包帯、ダンテが巻いてくれたの?」
「ああ」
「ありがと、わたし自分じゃ巻けないから」
「…」
「またお願いしていい?」

男は目を細める。

「日向」
「なに?」
「…いや」

男は目を逸らした。日向だって彼の思いはわかっている。謝りたくても謝れないのだ。プライド云々の話ではなく、繰り返すことはわかりきっているから。謝ったところで、もうしないと誓ったところで、守られるわけはない。それは互いによく理解していた。
それでも彼はいつも同じように口籠る。何か言いたげに日向を見つめ、結局は口を噤む。だがこの行為がある限り、日向は救われる気がした。どんな仕打ちであっても、たとえ繰り返されるとわかっていても、ただ無意味に虐げられているわけではないとわかるから。
だから、日向もただ微笑んだ。

昨日の仕打ちが嘘のように、日向に触れる男の指先は優しいものだった。柔らかく、大切にされているとわかる触れ方。そっと引き寄せられた体も、傷に障らないよう気を遣ってくれている。

「…もう少しだけ、眠ってもいい?」

後頭部を撫でていた手が、ぽん、と頭に置かれた。穏やかなこの時間の中で、愛する人の腕の中で眠りにつけること。背中の痛みはこの時間がほんの一時のものであることを忠告しているが、それでも日向は静かに目を閉じた。額に落とされる優しいキスを感じながら、今だけはと願う。
次に目が覚めたとき、男がどうあっても、何がおこっても堪えることができるように。


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