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chapter:3





目が覚めたとき、隣にあるはずの温もりが感じられなくて飛び起きた。シーツを捲っても、部屋中を見回しても日向の姿はない。一瞬嫌な予感が過るが、慌てて部屋を出たところで聞こえてきたシャワーの音にほっと息をついた。
階段を降り、躊躇いなくバスルームの戸を開くと、想像通り。湯気に包まれた日向が驚いたように振り返った。

「だっ…ダン」

日向が俺の名前を呼びかけるが、それすら包み込むように抱き込んで仕舞えば途端にシャワーに濡れる。恥ずかしいのだろう、顔を赤くしてそのまま俯いてしまった。密着して体を引き寄せれば日向はぴくりと反応するが、顔は上がらない。さっきまで裸を見られるどころかそれ以上のことをしていたというのに、苦笑いを浮かべると日向が胸元に顔を埋めた。それからシャワーに掻き消されそうなくらい小さい声で呟く。

「どうしたの…」
「起きたらお姫様がいなかったからな、探しにきた」

焦ったぜ、と素直にそう伝えれば日向はそっと顔を上げた。伺うようにこちらを見つめている。愛おしくなって、瞼にキスをした。また日向の肩が震えた。




「…あー…」
「…おじさんみたい」
「…なんだと?」

思わず出た感嘆のため息に日向がぽつり呟く。今は日向を後ろから抱き込みながらバスタブに浸かっている状態だ。少しカチンときたので腰を少し擽ってやると、身を捩る日向の動きに合わせて湯が跳ねた。もう出る、と日向はもがいたが、逃すわけもなく、しっかりと腰に腕を回す。もう一度湯加減に息を吐きながら、柔らかい体に目を向けた。
つるりとした肌は白い。そして所々赤く変色し、噛み跡もそこらに残っている。

全部、俺がつけた傷だ。

「…日向」
「ん…?」

日向がこちらを伺う。今は痛がる様子もなく、俺の体と温かな湯に身を委ねている。
本当なら謝らなければいけない。その傷を労わり、慰めてやらなければ。けれど、こちらを振り返った顔が、あまりに緩やかで、穏やかなもので。今更感じる罪悪感で、俺は何も言えなくなってしまった。
寝室で日向が隣にいなかった時、さっと血の気が引いた。とうとう、と。遅かれ早かれという予感はいつも感じている。考えないようにしているだけだ。ならば自分がどうするべきかなどわかりきっている。けれど、俺はそれができなかった。できたのは、ただ耳元で懇願するだけ。

「いなくなったり、しないよな?」

声は震えなかった。ただ日向を抱きしめる腕に力が篭る。ダンテ?小さく日向が俺を呼ぶが、反応しない俺にちゃぷりと湯が揺れる。

「ダンテ」

拘束された腕の中でなんとか向かい合う形になって、日向が俺の頬に手を添えた。

「いかないよ、どこにも」




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