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「よおダンテ、いい男になったじゃねぇか」
「うるせぇ」

どきりと肩が跳ねる。入ってきたのはさっき部屋にいたおじさん。

「お嬢さんがやったのか?いい腕をしてるな」
「はあ…」

ダンテの頬に赤く残った手のひらの跡に、にやにや笑うおじさん。無礼を働くからだぞと続けるおじさんに、ダンテが嫌そうに「モリソンだ」と教えてくれた。こちらも名乗ると知ってるぜとモリソンさんが笑う。

「この十数年、ダンテからよく聞いた。あんたは俺のことをよくしらねぇだろうが、俺はよく知ってるぜ」

余計なことを言うなとダンテが睨むがモリソンさんはこわいこわいとおどけるばかり。どうやらかなり仲がよさそうだ。ダンテが持ってきてくれたピザを、行儀悪くもベッドに腰掛けて頬張る。わたしの好きなシーフード。前食べた時より味が少し変わっているのは、やっぱり18年後の世界だからだろうか。

「モリソンさん」
「なんだい、お嬢さん」
「お聞きしたいんですが、今は何年ですか?」
「20××年だが」

あっけからんと答えられ、まるで嘘をついている様子はない。僅かに期待を裏切られた気分で、その様子に気づいたのか、モリソンさんがああと手を打った。

「あんた20年近く眠っていたんだったな。そりゃあショックを受けるのも無理はないか」
「ええ…まあ」
「タイムスリップみたいなもんだからなあ。今は困惑してるよな。だがよ、18年前に比べればいろいろ便利なものだってあるんだぜ。きっとあんたも気にいる。だんだん慣れるさ」

だからあんまり心配するなと言ってくれるモリソンさんにちょっと涙が出た。や、やさしいな…。

「だがなあ、ダンテよ、お前18年間寝てたレディに手を出すなんて、そんなに辛抱効かない性質だったか?」
「18年だぞ。そこまでお預けくらったんだ、ようやく再会できて、自分の証を刻みてぇって思わない男がいるなら会ってみたいね」

そしてダンテ。よくもしゃあしゃあと。もう一回平手打ちしてやろうか。
変わってないといえば変わってないけど。前は若さ故の熱が有り余ってる感じだったけど、今は熟練の余裕みたいなものが溢れている。さっきもやけに手慣れた手つきだったし。思い出してまた肌が粟立ってしまった。忘れよう。

「日向」
「え…あ、ハイ」
「体、おかしかったりしねぇか」
「ん、大丈夫…です」

一応慣れない敬語を使うとダンテは怪訝な顔をする。だって歳上だし。しかもだいぶ。ダンテだけど。

「新鮮だな」

やれやれと肩をすくめる。それからまたじっとわたしを見つめる。じーっと。
感慨深いんだろうな、18年ぶりだもんね。ずっと探してくれていたみたいだし。でもいくらダンテだって、わたしが知っているダンテとはいろいろ違うし、そんなに見つめられると困る。どうすればいいのかわからずピザを持って固まっていると、くすりと笑い声。

「そんなに緊張するなよ」
「し、してない」
「惚れちまったか?」

その言葉に顔を赤くして否定するものの、ダンテは笑いっぱなしだ。くっそー、随分大人になられたことで。前は弟みたいで可愛かったのに。調子が狂うな。やきもきしながら照れ隠しにピザを食べる。と、不意にポンと頭に手を置かれる。

「もうどこにも行くな」

優しくて強くて暖かい。変わってないはずなのに、その声だけはどこか悲しみを含んでいるように聞こえて。怒りの気持ちも忘れてダンテを見つめる。ダンテは笑っているけど、ああ、本当に心配をかけたんだな。目を覚ました時といい、今といい、痛いくらいダンテの気持ちが伝わる。
うん、と頷けばダンテもようやく不安な様子を消した。

よし、とわしゃわしゃ頭を撫でてくるダンテが、この時、それまでとは全く違う笑みを浮かべていたことなんて、気づくわけがない。

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