出会い

「ハンク、この人は誰?」
「俺の相棒だ」
「あい…ぼう?」

ぱちぱちとこちらを見つめる女性。見る見るその目が剣呑なものになっていく。

「嘘だ。ハンクは相棒なんか作らないでしょう。しかもアンドロイド嫌いなのに、アンドロイドが相棒になるわけ」
「こいつのおかげでそうでもなくなったんだよ」

淡々と言い放つハンクの言葉は、僕にとっては喜ばしいものだったが、彼女にとってはまるで真逆のものだったらしい。
驚愕と絶望の篭った視線でハンクと僕を何度も見比べる彼女に、ファウラー署長がトドメの一言を投げかけた。

「サイバーライフから派遣された捜査補佐モデルのアンドロイド、コナーだ。日向、今日からはお前の相棒になる」
「は…はあ!?」

目を見開いて僕を凝視する。

「コナーはハンクとアンドロイド絡みの事件を何件も解決している。エキスパートだからな、安心して捜査に当たってくれ」
「待ってください、わたしはハンクと」
「我儘言ってないで、頼んだぞ」
「そんな、署長、約束が違います!第一なんでこの人と…!!」

びっと指をさされた。相当な混乱、そして激昂状態にあるのはスキャンせずともわかる。こういう相手には、こちらが冷静に対処すべきだろう。わなわなと震えながらこちらを睨みつける女性に対して、僕は静かにタイを整えた。女性…日向と呼ばれた彼女は、指差したまま呆然とその様子を見つめる。

「サイバーライフから派遣されたRK800型アンドロイド、コナーです。よろしく、日向」
「あっ…え…っ」

すっと差し出した手を凝視し、日向は周りに視線で助けを求める。が、ギャラリーは面白がっているだけ、ハンクもファウラー署長もうんうんと頷くばかりで助けは得られない。それに彼女も気付いたのか、ゴーストを見るかのような目でこちらを見つめた。ソーシャルモジュールに組み込まれた通り、わずかに微笑んで見せれば彼女はだらだらと冷や汗を流す。

「ハ、ハンクッ…わたしあなたと組むために戻ってきたんだよ…!?」

最後の頼みの綱に彼女はいっそ泣きそうな顔で懇願する。しかしその頼みの綱も、肩を竦めてみせた。

「人手不足でな…コナーをよろしく頼むぞ」

彼女はあ、とか、う、とか、悔しそうに呻いた後、諦めのつかない様子で唇を噛み締めたが、ついにはがっくりと肩を落としたのだった。

ALICE+