1.5
あのチャンピオンが、一度ならず二度も負けた相手ーーー
メディアやファンが探さないはずがない。それでも10年近く隠れてきたのだから、そう簡単に見つかることはないと思っていたけれど。それでも自分の住む街の近くに、「それらしい」人々を見かけたときはゾッとした。チャンピオンの、あんな何気ない一言で、ここまで?念のため暫く家に引き篭もるうち、チャンピオンを負かした相手探しは鎮火してきた…ようだったけれど、未だに警戒心は消えない。極力トレーナーに見えないよう、ボールはバッグの奥底にそっと忍ばせていた。それから数ヶ月、すっかり街の様子も元どおり。一過性の話題なんてそんなものだ。元々そこまで街に出ていなかったこともあって、噂が流れた時期とわたしが引き篭もった時期がばっちり重なっていたことに気がつく人もいなかった。せいぜい「最近見なかったね?」と店のおじさんが話しかけてくるくらい。それを笑って受け流したことで、この騒動は終わった。
そう、終わった、と思っていた。油断していた。「それらしい」人々の姿も見えなくなって、噂も落ち着いて。忘れていたのだ。自分を捜しているのは、ただのファンや記者ではない。一番厄介な相手は、その元凶であるーーー。
「日向」
チャンピオンであった。
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