椿時雨





「カブさん、日向です!」
「日向?」

わあ変わってない。厳格そうな見た目も、熱いオーラも。

「随分久しぶりだね。元気だったかい?」
「はい!とても!カブさんもお元気そうで!」
「ポケモンくん達と毎日鍛えているからね」
「さすがカブさん!」

10年経って見た目こそ歳を重ねたものの、体つきはしっかりがっしり。ポケモンだけじゃなく自分自身も鍛える、ガラルのトレーナーの特徴だなあ。にこにこしながら見つめているとおや、とカブさんが首を傾げた。

「お父さんは一緒じゃないのかい」
「父はライモン…イッシュにいますよ」
「じゃあ君1人でガラルに?大丈夫?」

えへんと胸を張る。

「わたし、この10年間武者修行してたんです!」
「武者修行?」
「いろんな地方を渡り歩いたんですよ!イッシュはもちろん、カントー、ジョウト、シンオウにカロス!もちろんホウエンにも行きました!どこも強いポケモンがいっぱいで!」
「へえ、1人でかい」
「この子達が一緒でした!」

ボールを見せる。

「ああ、そうか…君は、全く相変わらずだね」

カブさんはふふっと笑った。相変わらずなのはカブさんもですよ。

「知ってますよね、カロスやホウエンのメガ進化!」
「ああ、もちろん。君も体験したかい?」
「残念ながら、キーストーンを持っていなくて。メガ進化したポケモン同士のバトルは観戦したんですけど…それももうすごくって!」

興奮したまま話していると、不意に後ろから声がかかった。どうやらチャレンジャーが来たようだ。

「すまないね。まだ話を聞かせてもらいたいんだが」
「いえ、こちらこそ急に押しかけてすみません」
「君の武者修行の成果も見せてもらいたいけれど、とりあえず、今日の夕食は決まっているかい?」

首を振るとカブさんはじゃあ僕が予約しようと笑ってくれた。本当にお父さんみたいだ。18時にジム前に集合しようと約束して、ジムを出た。
10年ぶりのガラル。街並みも以前とだいぶ変わっている。どんなポケモンがいるのだろう。楽しみで仕方ない。

「わっ」
「うわっ」

「ん?」

なんだか見覚えのある紫色の髪、明るい瞳。なんだ?既視感。どこかで、会ったような…?んん?と見つめると、体を起こした男の子の方も、眉間にシワを寄せてわたしの顔を凝視している。

「あんた、どこかで…」
「あれ、奇遇だね。わたしも君とどこかで会ったことある気がするよ」

でも思い出せない。誰だっけ?こんな子どもに知り合いいたかな?

「思い出せないや」

うーん、わからない。ぱんぱんと埃を払って立ち上がる。座ったままの男の子に手を差し伸べると、はっと瞳が瞬いた。

「あ、ありがとう」
「どういたしまして」



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