椿時雨





「うわっこれがチャンピオンのマント…」

そーっと肩に乗せてみる。案外重い。くるくるとその場で回るとマントもふわふわ揺れる。

「あ…ご、ごめん」
「いや構わないさ。続けてくれ」

続けてくれって言われても。ただ回ってただけだし。なんとなく気まずくてマントを下ろそうとするとダンデがおや?と首を傾げた。

「もうやめちゃうのか」
「うん。もう満足した」
「もう少し見ていたかったな」
「チャンピオン日向?」
「いや、俺のものに包まれている日向」

思わず、沈黙。意味を理解するのに10秒はかかった。ダンデがにこっと笑ったところで、ようやく我に帰ってかーっと顔が熱くなる。

「ぬ、脱ぐ」
「はは、照れなくてもいいのに」
「照れてない」
「顔真っ赤だぜ」
「ううううるさい」

くすくす笑われてますます恥ずかしくなる。翻弄されるってこういうことを言うんだろうか。バトルよりも考えが読めない。ぐいとマントを渡すと未だ笑いっぱなしのダンデはマントごと私を抱き寄せた。

「わああ」
「なんだ?その声」
「び、びっくりしたの」
「そうか」

ぎゅうとダンデの腕とマントに包まれる。ダンデの匂い。落ち着くけど、落ち着かない。そわそわと身動ぎする。名前を呼ばれてそっちを見ると想像以上の至近距離で思わず息が止まった。

「幸せなんだ」
「え、え…」
「ずっとこうしたかったんだぜ」

知らなかっただろ、と言われて控えめに頷く。鈍感だもんな、なんて嫌味も普段ならダンデに言われたくないと言い返すところだけど状況が状況なだけになにも言えなかった。だってなんか言ったら、く、唇くっついちゃいそうなくらい近いから。なんとか顎を引こうとすると腰に回った腕に力が込められる。

「逃げるな」
「に、逃げてない」

極力顔というか口を動かさずに答えると、ん?とわざとらしく顔を近づけてくる。聞こえないぜ、なんて言ってるけど100%わざとだ、わかってやってる。必死に明後日の方向を向く。

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