「カントーとジョウトの間にあるシロガネ山って知ってる?」
「シロガネヤマ…野生ポケモンが強いから入山規制かかってる山だったか」
「そうそう!そこにすっごく強い雪男がいるって噂があってねーユキノオーかな?と思って行ってみたんだけど、なんとトレーナーだったんだよ!」
「はあ?雪男は人間だったのか」
「そこで暮らしてるんだって」
「暮らしてるって…そりゃあ相当な変わりもんだな」
「すっごく強いトレーナーだったの!すごく!」
「すごい吹雪で、バトル中に崖から落ちたんだけどね
「ハア!?」
「骨折っちゃってさ。その人が助けてくれたんだけど、勝負はお預け」
「いやお前…笑い事じゃねぇだろ」
「ははは、あの人がいなかったら今頃雪の中で白骨化してたかもね」
「それが全然喋らない人でね、歳は同じくらいかなって思ったんだけど…ってあーー!!!キバナ!!この人!!この人!!!」
PWTの放送。カントー地方、レッド。
「宿は?決まっているのか?」
さっき言われたこともあって控えめに首を振ると案の定ため息を吐かれた。
「ほんとポケモンとバトル以外は無頓着だなぁ」
「そのために来たんだもん…」
全く仕方ないやつと笑ってキバナがスマホを取り出した。
「今からナックルのホテルあたってみるか?」
「うーん、あんまり空いてねぇ。シティホテルのスイートくらいだ」
料金を聞けばとんでもない額が返ってきた。桁が違う。やっぱりその辺の公園で野宿でもしようかなあと呟けばおれさまのナックルシティでそんなことすんなと半分本気めに怒られた。困った。ガラルには家に泊めてくれるような友達もいないし、路頭に迷うってこういうことかな?
「じゃあおれさまこの後寄るとこあるから。ダンデあと頼んだぜ〜」
「あ、ありがとう!またね!」
手をひらひら振りながらキバナは歩いて行ってしまった。相変わらず面倒見の良い人だったなあ。残された私たちの間にしーんと沈黙が訪れる。あれ?と思ってダンデを振り返るとばちっと目があう。けれど何故かすぐさま帽子で視線を遮ってしまった。
「さて、じゃあホテルまで送ろう」
「ダンデは用事ないの?大丈夫?」
「歩きたい気分なんだ」
ホテルに向かう途中、広めのコートでストリートバトルをしている人達がいた。まだ時間には余裕があるし、少し見ていこうと寄っていく。ツボツボとラプラス。どっちも良く育ってる。水しぶきがライトに照らされて眩しい。
「ダンデ、どっちだと思う?」
「そうだな…ラプラスはかなり積極的な戦い方をしている。攻撃の手を休めない。だがバトルに慣れているのはツボツボのようだ。トレーナーとの息が合っている」
ふんふん聞きながら様子を見守る。たしかにラプラスは攻撃がよく外れる。トレーナーの指示とタイミングが噛み合っていないようだ。ハイドロポンプが主砲のパワータイプに見えるけど、なんとなくラプラス大変そう。見たところ性格ひかえめなんじゃないかなあ。対するツボツボ、たしかに息ぴったりだ。さっきのいわなだれもばっちり当ててたし。ああでも、ラプラスもいい動き。うん、そうそう、そこだ。ほら、そのまま押し切って、ああ、そうじゃないってば!
「いやーおもしろかったね!」
結局、バトルはツボツボの勝利。ラプラスとトレーナーの息がもっと合うようになればさらにいい展開になっただろうけど、二匹とも良く頑張ってたよね。そう言って横にいるダンデに視線を向ける。と、なぜか体ごとこっちを向いていたダンデとばっちり目があった。
「君、本当にポケモンが好きなんだな」
それはダンデも同じでしょ、と笑おうとしたけれど、今日一番真剣な顔をしたダンデの様子に、思わず言葉を忘れた。
「日向」
「え、はい?」
「俺に会いに来たと言ったよな」
金色の瞳が真っ直ぐこっちを見下ろしている。
「他の誰でもなく、俺に」
ライトに瞳が揺らめく。
「俺も、本当に、会いたかったんだぜ」
ぱちり、と瞬き。
ぽす、と視界が暗くなる。わあと声を上げてもがくと、頭から物が落ちる感覚。見ればダンデの帽子。
「ダ、ダンデ?」
予想外の行動にダンデを見上げると、熱っぽくて、真っ直ぐこちらを射抜く、バトルをしている時のような瞳。
な、なんで今?バトルを見てて昂ってきた?闘争心に火がついたのかな?まあ、なんでもいいけど、そんなにバトルしたがってくれてるなら嬉しいな!
「今度はいつ会えるかな?バトルしたいね」
「君も君のポケモンもコンディションを整えてからだな。俺も今はオフだからそこまで予定は詰まっていないし…また連絡するよ」
「うん、待ってるね」
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