体が痛い。起きようと体に力を込めて、聞き間違いではなく、みしりと骨が音を立てたのにぞっとした。ゆっくり、極力痛みを感じないように体を起こす。
「大丈夫か?」
なんとか体を起こしたその瞬間、ぐいと腰を引き寄せられた。尋常じゃない痛みに意識が一瞬持っていかれる。
大丈夫かなんて尋ねるわりに行動が伴っていない。労わるならもう少し丁重に扱うべきだ。再起不能にでもする気だろうか。痛みの元凶を振り返ると、眩しい笑顔が目に染みる。
「おはよう、日向」
「ダンデ…」
「ひどい声だな」
笑いながら後ろから首筋にキスされる。生憎そんな可愛い行動でごまかされるわたしではない。目に入った噛み跡、傷痕、痣、その他エトセトラに今日こそはと決意を決めた。
「離して」
「どこに行く?」
「帰る」
「またそれか」
「まだ死にたくない」
「死なないさ」
紫色の柔らかい髪をぐりぐり押し付けながら、ダンデは今度は頬にキスしてくる。
「わたしを殺す気なの?」
「まさか!愛情表現だ」
「ワイルドすぎる」
「日向だって乗り気だっただろう」
全く悪いと思っていないなこの男。その証拠にさっきから腰に回された手つきが怪しい。ぎゅうっとつねってやるとむっとした顔をされた。
「痛いぜ」
「離して」
もう一度告げる。そんな言葉も睨む視線も無視して、なでなでと腹を撫でたかと思えば、ぷに、とお肉を摘まれる。デリカシーのかけらもない行動に痛む体を無理矢理反転させてぐいっと胸板を押した。
「最低」
「また一緒に鍛えよう。それからバトルも」
「余計なお世話」
「遠慮するな」
向かい合ったままぐいぐいと押し合っている私たちはお互い全裸。まったく何やってるんだろう。ちょっと情けなさを感じて力が弱まった瞬間を、この男が見逃すはずもなく。あっけなくベッドに押し倒されて、また体が悲鳴をあげる。
「いっ…」
「痛みを堪える日向も、いいな」
ああ、この変態チャンピオン。こんな人に負けたなんて、絶対に認めたくない。
朝日を逆光にして笑う男。
「いーよ…丈夫だから」
「君の体が丈夫なことと、俺が君に優しくしたいことはイコールじゃないんだぜ」
痛みはほとんどなかった。
「優しく、できるんだ」
「もう刻み付けなくても、君は俺を見てくれているからな!」
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