椿時雨





「ちょっと!!やめて!!」
「なんでキバナなんだ」
「関係な…ああちょっと!勝手に返信しないで!」

必死にスマホに手を伸ばすけど、リーチの差で届かない。片手でわたしの猛攻を防ぐダンデは、空いている方の手で何やらたぷたぷ文字を打っている。十中八九誘いを断るものだろう。人間として信じられないけど、この男はそういうことを平気でやってのける男だった。

「いいか、お前はただでさえ拐かされやすいんだ。オレ以外の男との外出なんて以ての外だぜ」
「キバナさんは君もよく知ってる人でしょ」
「余計にダメだ。あいつはお前のことを気に入っているからな」

ルール1、一人で勝手に外出しない。ルール2、誰かと出かける時は必ずダンデに誰と、どこに、何をしにいくかを伝える。ルール3、外出する時はGPSを付けること。

「断固拒否」
「何が不満だ?」
「全部。特に3番、GPSってわたしのプライバシーどうなってるの?」
「嫌なら外に行かなければいい」
「だから。嫌とか以前の問題にわたしの人権はどうなってしまったわけ?なんで全部ダンデが決めちゃうの、わたしの意思は?」
「ないぜ」
「な、なん…だと…」

いい顔で言い切ったぞこいつ…。前からちょっと自分本位というか、これと決めたら突っ走るところあったけど、この10年でかなりその特性が強化されたようだ。わたしの人権ない宣言されたけど、おまわりさん、この人本当にチャンピオンですか?

「オレは君を養うだけ稼ぎもあるし、家にいてくれて全く構わないぜ」
「わたしは構うよ。養ってもらう気なんてこれっぽっちもない」
「君がずっとこの家にいて、オレの帰りを待って笑顔で出迎えてくれれば最高だな」
「あの、話聞いてる?」

「ちなみにルール4は、『約束を破ったら一生家から出さな』」
「あーあーあーあ!聞きたくない!聞きたくない!!!!」

耳を塞いで喚けばダンデが煩いと迷惑そうな顔をした。いや被害者こっちだから。0-100でこっちが被害受けてるからね。

「君はわたしを社会から孤立させたいの?孤独死させたいの?」
「オレがいるんだから孤独死はしないだろ」
「そうじゃない、そういうことじゃないんだよ…」

話が通じない。もしこのルールが適用されたとしても、そんな外出制限されたら壊れる自信がある、身も心も。第一自分はバトルだのジムだのなんだので外飛び回っているくせに、わたしには一日中家にいろってそんなの不平等もいいところだ。

「ならオレの仕事についてくるか?」
「それは…」

一瞬、彼の行く先々について行く自分が頭を過ったけれどすぐに首を横に振る。どうせどこでも自分の恋人だと言いふらして憚らないんだろう。

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