じゅうたんにお願いして、いままでで一番早い速度で砂漠の中を飛んでもらっていた。乾いた風と細かな砂が容赦なく体に当たり、とても目を開けていられない。今は特に、服のひらひらしてる部分が抵抗となって、油断したら落ちてしまいそう。

「フィリア、だいじょうぶか?」

 必死にじゅうたんにしがみついていると、気づいたソラが手を繋いで引き寄せてくれた。ソラが支えてくれたおかげで落下の心配がないほどに体勢が安定する。

「ありがとう。ソラ」

 礼を言うとニカッとした笑みを返されて、更に幸福な気持ちになった。ソラの手は、優しいのに力強くて暖かかく、このままじゅうたんから降りても、ずっと繋いでいてほしいなんて――こんな状況なのに思ってしまう。





 降り立った場所は、アラジンたちと出会った流砂のすぐ近くだった。砂で作られたタイガーの頭部が砂漠の中に存在していた。二階建ての家よりも巨大な彼(?)は、まるで生きているかのように息をし、呻き、苦しんでいる。
 とても不思議な存在に興味はわくが、いま目指しているのは魔法の洞窟。このタイガーヘッドはさながら門番であろうか? アラジンを見上げ訊ねてみた。

「アラジン。洞窟の入口はどこ?」
「ここさ。このタイガーヘッドの口の中が洞窟への入口なんだ」
「えーッ!? あの口の中?」

 声をあげるソラの横で、ドナルドとグーフィーも目を丸くしている。アラジンは首をかしげた。

「ああ。けど、どうも様子がおかしいな」

 あれが入口だなんてとても信じられないが、一度行ったことのあるアラジンがそう言うのならばそうなのだろう。しかし、タイガーヘッドの瞳は闇を纏って鈍く輝き、大人しく口を開けてくれるどころか近づこうとするとダークレーザーで攻撃してくるため、とても中に入れる状態ではない。

「うわっ!?」

 ソラがギリギリでレーザーを避けた。足元がサラサラした緩い砂なので、たやすくバランスが崩れかける。

「あの目――闇に操られているのか?」
「これもジャファーの仕業なのかな?」

 前面に構えた盾の裏から顔をのぞかせ、グーフィーがタイガーヘッドを観察していた。

「あいつがやりそうなことだ」

 アラジンが苦く吐き捨てる。
 再びダークレーザーがとんできたので、自分も慌ててグーフィーの盾に隠れた。

「洞窟に入れないようにしてるってことは、ジャファーとジャスミンがここにいるってことだよね?」

 ドナルドがピョコっと腕を振り上げてジャンプする。

「よぉし。タイガーヘッドを正気に戻そう!」

 みんなが武器を構え、タイガーヘッドへ走り出す。
 ソラが身軽にタイガーヘッドの頭上に跳び乗ると、タイガーヘッドは口からバンディットを吐きだしたり、頭を激しく揺さぶってソラを振り落とそうとした。風の魔法で落ちそうになったソラを支え、邪魔をするハートレスたちはアラジンたちがやっつける。
 キーブレードは闇を祓う――ソラがタイガーヘッドの目に纏わりついた闇を攻撃すると一瞬まばゆい光が発生して、光が納まったときにはタイガーヘッドの瞳が鎮まっていた。



 ぐわっと大きく開いたタイガーヘッドの口の中をおそるおそる覗きこむ。石づくりの長い長い下り階段が続いており、ここから見える奥行きだけでも、洞窟というより迷宮だった。冷たい空気がひゅうっと頬を撫でてくる。
 しばらくみんなと階段を降りていたが、ふと、覚えのある感覚に足を止めた――世界の鍵穴を前にしたときと同じだ。また、ここにもあれがある。

「もう! ハートレスだらけ!」

 ドナルドがぷりぷり怒る。アグラバーの街同様、洞窟の中もハートレスがたくさん待ち構えていた。前にアラジンが来た時にはいなかったそうだ。ジャファーがここにいるという確信が強まると同時に、ジャスミンまで巻き込んで、なにか大変なことが起きそうだという不安がかきたてられた。

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