偶然にも、戻り道に広場の宝箱から67、68、69番目仔犬たちを見つけたことでフィリアの精神が安定した。いつもならドナルドがすぐに仔犬たちをテレポでトラヴァースタウンへ送ってあげるのだけれど、「博士の家まで」という条件つきで、しばしフィリアは仔犬たちのあたたかくて柔らかい毛並みに頬ずりしながら歩いていた。
フィンケルスタイン博士の家に戻ってくると、本の前にいた彼はワスレナグサを受け取りながらニンマリ笑った。
「よしよし、持ってきたか。完全な心を作るにはもうひとつ……ビックリ≠ェ必要じゃ。こいつのありかは町長が知ってるはずだ」
「わかったよ、フィンケルスタイン博士」
ジャックは「よし、みんな。町長のところへ行こう!」と号令をかけてくる。戻ってきたばかりなのにまたお使いかと、ちょっとうんざりするこちらに対し、全く疲れた様子はない。
出かけようとするジャックの足に、ついてきていたゼロがふよふよまとわりついた。
「すぐに戻ってくるから、ゼロはここで待っているんだ」
一方で、仔犬たちを名残惜し気に抱きしめるフィリアへドナルドが言う。
「フィリア。約束だぞ。仔犬たちを送ってあげなくちゃ」
「うん。ホントはもっと一緒にいたかったけれど……」
ドナルドが杖を振りかざし仔犬たちを送ろうとしている姿に興味をもったのか、ゼロにホネを与えたジャックがフィリアたちへ近寄った。ジャックに接近されたことに気づいたフィリアは仔犬たちを抱きしめたまま尻尾を膨らませて硬直する。仔犬たちが甘えてキュンキュン鳴いた。
「フィリア。君が大事に持っているソレはなんだい?」
「こ、仔犬だよ。知らないの?」
「それが犬だって? 怖くもないし、不気味でもない、牙もむき出しじゃないし、犬らしさなんて欠片もないじゃないか」
内容が意外だったのだろう。一時、フィリアは恐怖も忘れ頭にいっぱい「?」を浮かべた表情で答える。
「えっ。仔犬って、かわいいでしょ?」
「かワいイ?」
今度はジャックがフィリアと同じような表情になった。仔犬をそ〜っと骨の指先でチョンと触れるなりビクッとして「なんだ? やわらかくて、ふわふわしているぞ!」と心底不思議そうに身を離した。
「僕にはよくわからないなぁ。不気味な犬ほうがずっと素晴らしいと思うのだけど」
ジャックはゼロを見て、ポリポリ頭をかきながら「さぁ、ビックリ≠取りに行こうか!」と扉のノブに手をかけたのだった。
「残るは“ビックリ”だけじゃな。その件は町長にまかせてある。町長の居場所は……墓場のカンオケ、とだけ言っておこうか」
フィンケルスタイン博士のヒントにより、再び墓地へ。奥だと思っていた場所に横たわっていたカンオケは更に奥の墓場へと続く扉になっており、その先で町長が待ちわびていた。なぜ広場にいなかったのだろう。ビックリ≠おくれと頼めば、彼はニタリと笑って言った。
「そこの墓石から、次々と幽霊が現れます。幽霊が現れた順番どおりに墓石を調べてください。もし順番を間違えると……ビックリ≠キるでしょうな!」
ドナルドが「僕に任せろ」と名乗り出る。途中まで上手くいってたが間違えてしまった瞬間、彼の眼前で小規模な爆発が起きて「グワワワアッ!」と尻もちをついた。「やられたな」って笑ったら「油断しただけだよ!」とプリプリ怒る。
その後、オバケを直視したくないフィリア以外のメンバーで無事にクリアすると、背後からボンッとひときわ大きな音と衝撃があった。町長が拍手する。
「おみごと! ほら、カボチャをごらんなさい」
彼の指す方向に飾ってあったひときわ大きなかぼちゃが破裂していた。かぼちゃの中には隠されていた宝箱がむき出しになっており、それを開ければ更に箱が入っている。
「なんだこれ?」
ためらわず箱を開ければ、ビヨヨン! とバネが飛び出してきた。驚いて「うわっ!?」と尻もちをついてしまう。古典的なビックリ箱だ。拍手していた町長がクツクツ笑う。
「いかがです? さぞや“ビックリ”したのではないですかな?」
ドナルドたちが「やられたな」と面白そうに笑っている。
「ちぇっ、油断しただけだって!」
グーフィーの後で目を瞑り耳を塞いだフィリアに気づかれる前に起き上がり、びよんびよん箱の中で笑い続けるビックリ箱のフタを強めに閉じた。