やっと研究室へ戻ってくると、フィンケルスタイン博士は「よしよし、持ってきたか」と出迎えてきて、早々にビックリ箱もあの布袋の中へ放り込んだ。

「今度こそ心の完成じゃ!」

 どんな仕組みなのか。本物のように脈動する心臓にみんなワクワク、ドキドキしていた。
 フィンケルスタイン博士が大事に心を抱えて装置の前に移動する。しかし、診察台の横を走っていたとき唐突に何かが飛び出してきて、電動車いすの車輪が引っかかって転んでしまった。はずみで手放された心は診察台の上を一度大きくバウンドし、どこからか飛び出してきた赤いなにかがしっかりとキャッチする。
 何が起きているの?──呆気にとらわれている間に入口前に勢ぞろいしたのは三人の小鬼たち。ジャックが彼らを「ロック、ショック、バレル!」と叱り声で呼んだが、彼らは答えることなく、ケタケタ笑い声を上げて出て行ってしまった。博士が床を叩きつける。

「なんたることだ! わしの研究成果をあんな連中にうばわれるとは!」

 とりあえず倒れたままのフィンケルスタイン博士を放っておけず、サリーと共に手を貸そうとしたが、フィンケルスタイン博士は悔しがってジタバタしながら「ワシのことはいい。早く後を追うんじゃ!」と命令してきた。

「おおかた、あの3人はブギーにそそのかされたんじゃろう。今ごろブギーの屋敷に報告に行っとるに違いあるまい」
「ブギーって?」
「ジャックに訊け。とにかく、一刻も早く心を取り返すんじゃ!」
「フィリア、僕たちも行こう!」

 グーフィーに呼ばれ、フィンケルスタイン博士はサリーに任せて広場へ駆けだした。先に追いかけていたソラとドナルド、ジャックはしきりに広場を見回しているが、小鬼たちの姿はなかったようだ。ソラが叫ぶ。

「やばい、見失った!」

 ジャックが膝を叩き、すぐさまゼロが飛んできた。

「ゼロ。悪ガキどもを追うんだ!」

 ゼロがまた墓場の方へ飛んで行く。追いかけると、墓地の柵の向こう側にあった月の見える丘にある、うずまき状の丘を歩くバスタブに乗って小鬼三人組が進んでゆく姿がチラッと見えた。

「あの先はブギーの屋敷だ!」
「なぁ、ブギーって誰?」

 ソラの問いに、ジャックは激しく目をつりあげる。

「ウーギー・ブーギー。あの小鬼たちの親分で、この街の鼻つまみ者さ! ズルやイカサマばかりするヤツなんだ」

 どうやらサリーのようにハートレスとのハロウィンを不安がる人でもなさそうだ。ならば、あの恐怖の闇鍋みたいな心を盗んだのはジャックに対する嫌がらせ? それとも──。

「心を盗んで、どうするつもりなのかな?」
「アイツのことだ、どうせロクなことにならないさ。なんとかヤツの手に渡る前に、悪ガキどもから取り返さなくちゃ!」

 ジャックが怒りに燃える火炎でランタンつきの台に火を灯す。「さあ乗って!」と指示され飛び乗れば、台は火炎の力によって動き出し、先ほど小鬼たちが歩いていた月の見える丘へ運んでくれた。
 月の見える丘の正面には、らせんのようにねじれた古い大木が塔のようにそびえている。ボロボロの板で繋がれた通路と廃れた小屋がいくつも取りつけられており、それらが合わさり巨大な屋敷の態になっているが、強い風が吹けばいまにも壊れてしまいそうだ。住処にしているのか、屋敷のあちこちにたくさんのハートレスがひしめき合っているものだから、つい忘れかけていた恐怖が蘇ってきた。
 ガーゴイルの一匹と目が合った気がして思わずソラの背に隠れると、ソラも屋敷じゅうのハートレスたちに気づいて顔をしかめた。

「ここもハートレスだらけだ」
「ひょっとして、ブギーはハートレスを操るの?」

 もしハートレスを操るならば、マレフィセントと関係があるかもしれない。どんどん不穏になってゆくブギーという人物像。ジャックがう〜んと首をかしげた。

「ブギーがハートレスを操れるなら、僕のハロウィンを真っ先に邪魔してきそうなものだけど」
「足を止めてる場合じゃないぞ!」

 小鬼三人組はもう屋敷の中だ。急ごう。ドナルドの言葉を合図に、みんなが屋敷へと踏み入ってゆく。ぶるりと震える足を叱り、仲間たちに続いた。

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